香りはすれども、姿は見えず
先日散歩をしていたら、イチジクの香りがしてきました。
ふと見ると、道のわきの畑にイチジクの木がありました。でも、イチジクの実は影も形もまだありません。
イチジクの木そのものから、イチジクの実のにおいが発せられているのです。
あと一カ月半もすると、田んぼの稲の穂が膨らみ始めますが、このころになると、田んぼからお米の香りがし始めます。
秋になるとキンモクセイが咲き始めますが、こちらも、まだ蕾も膨らみ始める前から香りがしてきます。
同じく、秋、桜の林に行くと桜餅の香りがしてきます(他の季節でも香りますが)。
落ち葉が濡れて分解されているからか、桜餅の甘い香りが林からしてきます。
ちなみに、桜餅にそっくりなにおいを持つ植物が他にあります。
それは、トンカビーンズと言う、中南米産の豆を乾燥させたものから溶剤抽出します。
トンカビーンズはアロマセラピーでは使用しませんが、フレグランス業界では非常に重要な香料です。
甘く、パウダリーで高級感があり、柑橘系の香りとよくなじみます。
ところで、自然の香りはいたるところで発せられているのですが、注意を向けないと気が付かないくらいのほのかなものも多いのです。
それをその場で楽しむのが私は好きですが、時々、この香りの精油が欲しい!と思うことがありますが、ないのです。
精油の収油率[抽出できる精油の割合]が低すぎて、コストと手間がかかりすぎて、誰も作らないのです。
アロマセラピーで使う精油は収油率が高いものが中心です。
たとえば、ラベンダーでは、植物の重量の0.7~0.85%です。
ところが、ローズではこれが、種類や抽出法にもよりますが0.01~0.05%前後です。
ですので、ラベンダーとローズの精油の価格が何倍も違うのも納得がいきますね。
芳香植物を水蒸気蒸留すると、主に植物の揮発性の高い香り成分(香りやすい成分)が濃縮されて、
かなりインパクトの強い香りに変身します。ある意味、不自然なくらいの香りの濃度ですので、
そのままよりも、再び薄めたほうが、より自然に近い香りになります。
たとえば、収油率が低いローズはしっかり薄めたほうがちょうどよい、心地よい香りになりますよ。
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