260年ぶりの改名、ローズマリー
人は変化を好まない
コロナ禍になってもうそろそろ一年半になります。多くの方々がその影響によって様々な変化を余儀なくされました。
まず、テレワークや外出制限、そして、教育に関わる人々にとってはオンライン授業などが生活を大きく変えました。
頭の固くなってしまっている中高年やデジタル系に興味がなく、避けてきた人々にとってはオンライン授業を開くのも参加するのもハードルが高かったと思いますが、背に腹は変えられない、いやと言ったら仕事も失うくらいの時は、どんな人もそのハードルを何とか飛び越えてしまうから人間の力ってすごいなと思います。
ところで、いまさらなのですが、2017年に英国の王立園芸協会がローズマリーは実はセージの仲間であるということを宣言し、260年以上にわたって世界中で使われてきたRosmarinus officinalis からSalvia rosmarinus に改名してしまったのです。
植物の学名は英国王立園芸協会に決定権があるらしいのです。さすが大英帝国の威厳ですね。
学名変更の件は少しの時間を経て、日本の私たちの耳にも入って来ていましたが、世の中はまだそれを認識しているのかいないのか、誰もあまり話題にしていません。
ウィキペディアでさえも、このブログを書いている2021年7月23日の今も、まだ古い学名のままです。
じゃあ、うちのテキストもまだこのままでいいか~なんて思ってしまうのです。そのうち変えます、すみません。
ローズマリーは薬用植物としてとにかくスーパープラントだと思います。
万能薬と言っていいほどの様々な薬理効果の中でも、近年抗酸化作用のある植物やその抽出物が注目を集めていますが、そのようなことが言われる前の、ずっとずっと大昔からヨーロッパでは伝統的に、脳への血流を高めるので認知症に良いとされて、若返りに良いと言われてきたのです。
食品業界でももうだいぶ前からローズマリー抽出物が酸化防止添加物として使われてきました。
精油には含まれませんが、ロスマリン酸がそのような物質の一つとして研究対象となっています。
東京大学でのアルツハイマー予防効果を調べた実験があります。
アルツハイマー病の発症に関わるアミロイドβの凝集をロスマリン酸が抑制するというものです。
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20190618-1.html
↑セージの葉のようなすこしべたつきのあるローズマリーの葉の質感はやはりセージなのかとおもったりします。
それはさておき、夏はどうしても副交感神経が優勢になりますし、暑すぎて食欲もないし、動くのもいや、という状態になりやすいですね。
クーラーの効いた部屋でネット映画を鑑賞する以外、なにもする気が起きない!という、そんな時におすすめなのがローズマリーの精油やローズマリーの芳香蒸留水です。
少し薬臭いけどフレッシュな香りが、「エンジンがかからない時」におすすめなのです。
香りの相性としても、また、作用的にも一緒に使うといいのがペパーミントの精油や芳香蒸留水です。
両方とも神経伝達物質であるドーパミンの分泌を促して、シャキッとさせてくれます。胃腸の働きもサポートしてくれます。
ローズマリーはオーデコロンを構成する精油でもあり、オーデコロンの主役となっている柑橘系の精油と香りの相性がいいです。ぜひお試しを!
↑ローズマリーは何年かすると枯れてしまうのですが、枯れてしまう前に、子孫を残してくれます。世代交代をした私の家のローズマリーです。
香りはすれども、姿は見えず
先日散歩をしていたら、イチジクの香りがしてきました。
ふと見ると、道のわきの畑にイチジクの木がありました。でも、イチジクの実は影も形もまだありません。
イチジクの木そのものから、イチジクの実のにおいが発せられているのです。
あと一カ月半もすると、田んぼの稲の穂が膨らみ始めますが、このころになると、田んぼからお米の香りがし始めます。
秋になるとキンモクセイが咲き始めますが、こちらも、まだ蕾も膨らみ始める前から香りがしてきます。
同じく、秋、桜の林に行くと桜餅の香りがしてきます(他の季節でも香りますが)。
落ち葉が濡れて分解されているからか、桜餅の甘い香りが林からしてきます。
ちなみに、桜餅にそっくりなにおいを持つ植物が他にあります。
それは、トンカビーンズと言う、中南米産の豆を乾燥させたものから溶剤抽出します。
トンカビーンズはアロマセラピーでは使用しませんが、フレグランス業界では非常に重要な香料です。
甘く、パウダリーで高級感があり、柑橘系の香りとよくなじみます。
ところで、自然の香りはいたるところで発せられているのですが、注意を向けないと気が付かないくらいのほのかなものも多いのです。
それをその場で楽しむのが私は好きですが、時々、この香りの精油が欲しい!と思うことがありますが、ないのです。
精油の収油率[抽出できる精油の割合]が低すぎて、コストと手間がかかりすぎて、誰も作らないのです。
アロマセラピーで使う精油は収油率が高いものが中心です。
たとえば、ラベンダーでは、植物の重量の0.7~0.85%です。
ところが、ローズではこれが、種類や抽出法にもよりますが0.01~0.05%前後です。
ですので、ラベンダーとローズの精油の価格が何倍も違うのも納得がいきますね。
芳香植物を水蒸気蒸留すると、主に植物の揮発性の高い香り成分(香りやすい成分)が濃縮されて、
かなりインパクトの強い香りに変身します。ある意味、不自然なくらいの香りの濃度ですので、
そのままよりも、再び薄めたほうが、より自然に近い香りになります。
たとえば、収油率が低いローズはしっかり薄めたほうがちょうどよい、心地よい香りになりますよ。
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