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アロマセラピストであり、リンパドレナージセラピストである私にとって、コロナ感染者が苦しめられている様々な症状の中に、注目すべき嗅覚障害、脳の障害があります。

また、これ以外にも、様々な命に係わる深刻な障害がなぜ、起きてくるのか?

それは、ただ、受け身的にニュースを見ていてもわかりません。

それを知るには科学的な研究論文を調べることがもっとも理にかなっています。

そうして調べた専門家の研究論文のいくつかが、答えを与えてくれました。

この二つの障害に注目して調べていくうちに、基礎疾患を持つ人や高齢者が重症化しやすい理由も見えてきました。

どうも、サイトカインストームだけが理由ではないようです。

そして、感染予防ばかりに目を向けるのではなく、そもそもコロナに負けない身体を維持するために、最低限すべきことも見えてきました。

 

まずは感染によって細胞レベルで何が起きているのかを研究論文を読み解きながら考えました。

 

あのACE2受容体はどこにある?

そもそも、コロナウイルスがヒトの細胞に侵入し、増殖するには細胞にACE2という受容体が存在する必要があります。これはニュースなどでも報道されています。

コロナウイルスの表面にある、スパイクという突起がヒトの細胞の表面にあるACE2という受容体と結合することで、細胞膜が開き、ウイルスのRNAが細胞の中に送り込まれて、細胞の中でウイルスの遺伝子を複製し新たなウイルスを多数増殖し、それが細胞の膜を破って(細胞は死にます)外に飛び出し、他の細胞に侵入する、ということを繰り返すのですが、このACE2受容体のない細胞にはウイルスは侵入できないのですが、残念ながら、ヒトの細胞にはACE2受容体を持つものが多いのです。

特に多いのが神経細胞を助ける細胞や血管壁の細胞です。血管がウイルスにやられてしまっては細胞は生きていけません。

 

嗅上皮が損傷する

コロナウイルスによって嗅上皮が損傷される、だからにおいや味がわからなくなる、ということはずっと言われてきましたが、具体的に嗅上皮の何が損傷されるのでしょうか?

アロマセラピーの勉強をした方なら、嗅上皮には嗅覚を伝える嗅細胞だけではなく、支持細胞sustentacular cellsが存在することをご存知でしょう。

実は、嗅細胞、そして嗅球にはACE2受容体はないのです。

コロナウイルスは嗅細胞ではなく、ACE2受容体を持つ支持細胞や基底細胞に感染しているのです。

これらの細胞は嗅神経の代謝を助けたり、損傷された嗅上皮の修復を行っていますので、嗅細胞そのものが感染していなくても、これら、嗅神経をサポートし、粘膜を維持する細胞が感染するために、嗅上皮が損傷、脱落してしまう。その結果として嗅覚が失われてしまうのではないかとの見方が出てきています。

https://hms.harvard.edu/news/how-covid-19-causes-loss-smell

 

ペリサイトが症状の悪化や後遺症の鍵を握る?

ペリサイトとは身体の血管の内皮細胞に張り付き、取り囲むように存在する細胞です。

そして血管内皮細胞の分化や増殖を制御しています。ACE2受容体はペリサイトにも発現しています。

脳においても、脳神経そのものはACE2を発現していませんので、コロナウイルスに攻撃されることはありません。一方、このペリサイトが脳神経の為に大変重要であることが指摘されており、ペリサイトが感染することで、脳神経がダメージを受けると考えられます。脳におけるペリサイトの役割は、

 

①血管新生と血液脳関門BBBの形成と安定化

血液脳関門は神経細胞を異物から守るための構造と機能です。また、血管も細胞が生きるためにはなくてはならないものです。

 

②脳の血流制御

神経活動に応じ、血管壁を拡張したり、収縮したりして脳の血流を調整しています。この機能が失われれば、神経細胞が必要とするものが血液によって運ばれにくくなる可能性が考えられます。

 

③多様な因子を生産、分泌する

神経栄養因子、増殖因子を分泌することで、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど、神経細胞の機能や分化に影響を及ぼします。また、さらに重要なことは、炎症細胞に対し、抗炎症作用を有する分子群を分泌し、炎症の終焉組織修復促進作用を発揮することなのです。

 

コロナウイルスの感染がすでに無くなった後も、精神状態の異常や嗅覚異常が継続するなど、不可解な症状が続く人がいます。それらを調べていくと、例えば、脳の深いところで炎症が続いている例が報告されています。ブレインフォグ(脳の霧)と呼ばれる状態が起きているとみられています。おそらく、ペリサイトがウイルスによって損傷を受けた結果、ウイルスが消えた後もなかなか炎症を終焉することができず、炎症が続いているのではないかと考えられます。ちなみに、話がそれますが、うつ病と脳内炎症の関連性が以前から指摘されています。

 

ブレインフォグhttps://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/nhkspecial_1108/detail/detail_01.html

 

ハイリスクグループとペリサイト機能障害

既に報道などで、基礎疾患がある人や高齢者が重症化しやすいことが伝えられていますが、具体的な理由はあまりニュースでは聞こえてきません。

免疫力の低下?どうもそれだけではないようです。どうも、ペリサイトの機能障害が関係しているのではないかと思われます。

 

参考論文「ペリサイトは脳機能にとってなぜ重要なのか? 吾郷哲朗」https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/59/11/59_cn-001357/_pdf/-char/ja

 

ペリサイトの機能障害は次の要因によって起きるとされています。

①加齢 

細動脈硬化、心機能低下、大血管狭窄などによって、細小血管、毛細血管レベルでの低灌流が起き、それがさらなる低灌流を招きペリサイト機能が減弱する。

 

②高血圧 

血管の硬化を招き、①と同じような結果となる

 

③糖尿病 

糖尿病性細小血管障害により、①と同じような結果になる。糖尿病性網膜症はペリサイト障がいの代表的疾患であり、BBBの破たん、血液成分の漏出などを認める。また、高齢者で抗血小板薬の不用意な使用によっては、ペリサイト障害の原因になるとも考えられているようです。

 

④脂質異常

アルツハイマー病や高齢者の認知機能低下に関わる遺伝子の中でもっとも強力とされている遺伝子、アポリポ蛋白Eは、脂質代謝やコレステロール代謝の調整に重要な役割を持ちます。脂質代謝の異常を起こす遺伝子は日本人の10~20%にあると考えられています。

脳ではアストロサイトが神経細胞、オリゴデンドロサイト、ペリサイトが必要とするHDLとしてコレステロールを供給しているため、脂質代謝異常があると、コレステロールの供給がうまくいかず、これらの細胞も弱り、BBB機能障害や微小出血のリスクにもなると考えられています。

 

アポリポ蛋白Eと精神神経疾患

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1130080773.pdf

 

 

というわけで、コロナウイルスに感染した際に、微小血流にすでに問題があるリスクグループでは、それがさらにウイルスによってどれくらい障害されるかということも、重症化の程度に影響していると言えそうです。

血液は命の源、そして、血管はそれを細胞一つ一つに送り届ける重要なパイプです。中高年は普段からこのパイプが詰まったり、固くなったり、細くなって流れにくくならないようにメインテナンスをすることが、コロナに感染した際にも重症化を防ぐことにつながるのではないでしょうか。

 

 

ACE2へのコロナウイルスの結合をブロックする精油

2020年6月、米国US National Library of Medicine National Institute of Healthに掲載された基礎研究論文で、上皮細胞を使って10種類の精油が細胞のACE2受容体の応答能を低下させるかどうかを実験したものがあります。この研究結果では、レモンおよびゼラニウムの精油、さらに二つの精油に含まれるシトロネロールおよびリモネンが応答能を顕著に低下させたことを報告しています。これらの結果はSARS-CoV-2 / COVID-19の人体への侵入の防止に寄与する可能性がある貴重な天然抗ウイルス剤であることを示唆しています。

 

PMCID: PMC7355681

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7355681/

Category / アロマコラム

Author / Kazue Gill

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