September 03 2021

サー・キース・ハントによる講座が来年1月開催予定

ロイヤル・フリー病院はロンドンの閑静なハムステッド地区にあるヨーロッパ有数の総合病院です。
1828年、外科医として働き始めたばかりのウィリアム・マーズデン医師は、貧しい人々が医療を受けられない現実に驚き、貧しい人が無料で治療を受けられる病院が必要であると考え、皇室の援助を受けてこの病院が設立されました。19世紀にヨーロッパでコレラが猛威を振るった際に唯一、閉鎖せずに治療を続けた病院としても有名です。常に真に患者に寄り添う病院だからこそ、アロマトリートメントがここまでしっかりと定着したのです。

このロイヤル・フリー病院で1992年にアロマトリートメントを始め、その後、2019年に定年退職するまで補完療法チームのリーダーとしてマッサージを続けたセラピストがサー・キース・ハントです。
彼は、もともとリクリエーション・マネージャーとして十代で病院に就職しましたが、イベント開催中のある事件をきっかけに、「触れること」の重要性に目覚め、病院でのマッサージの草分けである英国人のクレア・マクスウェル・ハドソン氏に師事し、マッサージを学びました。始めは慣れないマッサージの勉強に挫折しそうになりながらも、周りの人々に支えられて無事、資格を取得しました。
彼は最初、仕事の傍ら、医療スタッフのストレスケアとして医師や看護師にボランティアでマッサージを行っていましたが、その効果を実感した医師たちが、患者への施術を依頼するようになり、その成果が認められて、2001年、病院のマッサージセラピストとして正式に雇用されました。

そして、年々、施術件数が飛躍的に伸び、これまでに何十万人もの患者とその家族に癒しの時間が提供されました。その素晴らしい功績に対し、2013年には王室からサー(MBE)の称号が与えられました。
補完療法チームのメンバーも次第に増え、2017/18にはセラピストは24名となり、年間の施術件数がなんと34,780回に登りました。
ロイヤル・フリーでは、医師の指示書があればどのような病気の患者でも無料でアロマトリートメントが受けられます。化学療法、放射線療法、透析、臓器移植などを受けている患者も例外ではありません。年齢も5歳から101歳まで幅広く、すべての病棟の患者が対象です。オンコロジーマッサージ(がん患者へのマッサージ)はもちろん、様々な難病や進行性の病気、遺伝性の病気の患者にも施術を行います。
エボラ出血熱に感染した看護師にもチームのメンバーが防護服を着用してマッサージを提供しました。
キース先生は2019年に定年を迎えて退職しましたが、その後もボランティアとして週に一回、病院で施術を行っています。
昔も今も、キース先生は病棟内を歩く時も笑顔を絶やさず、どんな相手にも気さくでフレンドリーに対する病院の人気者です。キース先生が常にセラピストに心がけてほしいと説いているのが「アイコンタクト」。心を通わせるためにもっとも重要なコミュニケーションです。
キース先生は輝く光を放つ天使のような方ですが、医療現場での施術に関わる数多くのルールや責任、施術記録管理、様々な病気で苦しむ多様な文化背景を持つ人々へのパーソナルな対応、個性と考え方が多様なセラピストチームを一つにまとめて信頼されるチームを維持すること、また、寄付で支えられているセラピストスタッフの人件費を工面する寄付金集めの活動、などなど、非常に現実的な面も持ち合わせたバランスの取れたセラピストです。だからこそ、実現できた施術件数と功績なのです。世界中のどこを探しても、これだけのマッサージ施術症例を果たしたチームは他にありません。1996年からそのキース先生の働くロイヤル・フリー病院での見学や研修ツアーを開催してきたのがJEA校長のギルです。

2022年1月、JEAのために、キース先生が再び、ロイヤル・フリーで培った叡智を伝えてくれます。
コロナウィルスの状況が許せば来日し、技術研修をしていただきます。もし、来日が難しい状況でも、オンライン講座(Zoom)で現場での症例とアプローチについて講義をしていただく予定です。ぜひ、この素晴らしい機会を見逃されませんように!

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Category / アロマコラム

Author / Kazue Gill

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