August 02 2024

トータルペインとアロマセラピー

長年、私は緩和ケア病棟でアロマセラピーの施術をさせていただいてきました。

 

今、がんは死亡原因の第一位となっていますが、それでも医療従事者の方でもない限り、自分や身近な人ががんを発症するまではその辛さについてあまり把握できていないと思います。
ということはその時が来たら心の準備ができていないかも?出来たら自分は準備しておきたい。
 

私の両親は二人とも何年もかけて緩慢に進行する肝臓がんで70代前半で亡くなりました。
ですので、私自身は長年、死というもの、がんというものに向き合ってきたように思います。
 

シシリー・ソンダースという英国のホスピスの草分けの医師が提唱した「トータルペイン(全人的苦痛」という、痛みに関する概念を提唱した方がおられます。
 

現在も緩和ケアにおいてはこの概念は基本的な考え方として受け継がれています。
トータルペインとは肉体的な痛み、精神的な痛み、社会的な痛み、霊的痛みの4つの痛みのことであり、がん患者、特に末期において顕著になってきます。
 

ただ、これは本当に人によってさまざまであり、その方のそれまでの人生の歩み、ものの考え方、死生観、家族や親しい人との関係、経済状態、緩和ケアによるサポートのあるなし、など様々な要素によってこれらの痛みは左右されるのです。
 

私が常日頃、本当に素晴らしいなと思っているのは、緩和ケアに携わる多くの医師やメディカルスタッフの方々が、日々このような終末期の患者さんの心と身体をどうやったらもっと楽にして差し上げられるかについて常に勉強をされているということです。
 

緩和ケアもどんどん進歩し、在宅での看取りも希望すれば可能になってきました。とても頼もしいことです。
 

私の住む明日香村にはうれしいことに地域医療に貢献度が高かった医師に送られる赤ひげ大賞を2024年に受賞された武田 以知郎先生がおられます。「明日香に生きる」というドキュメンタリー映画でも紹介されています。
こんな素晴らしい先生が自分の住む村にいてくださることが心強いです。
 

それから、死を目前に控えた愛する人を前に、家族は無力感を感じることも多い中で、セラピストがアロマセラピーの施術をするだけではなく、子供やパートナー、家族が簡単でよいから良い香りのマッサージオイルで心を込めて手足を軽擦してあげることは患者本人だけではなく、家族にとっても心の救いになり得ます。
 

実際にそのようにして痛みが楽になった患者さんも過去におられました。

その時、喜んでいるのは患者さんだけではなく、家族さんも喜んでおられるのです。
タッチの力、香りの力を一般の人にも広げていけたらいいなといつも思っています。
 

こんな病気の時だけではなく、なにか辛いことがあったら家族まるごとが助けられるものですので、これをもっと社会に広めていきたいと思います。
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Category / アロマコラム

Author / Kazue Gill

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