イチジク

先日散歩をしていたら、イチジクの香りがしてきました。
ふと見ると、道のわきの畑にイチジクの木がありました。でも、イチジクの実は影も形もまだありません。
イチジクの木そのものから、イチジクの実のにおいが発せられているのです。
あと一カ月半もすると、田んぼの稲の穂が膨らみ始めますが、このころになると、田んぼからお米の香りがし始めます。
秋になるとキンモクセイが咲き始めますが、こちらも、まだ蕾も膨らみ始める前から香りがしてきます。

稲の穂

同じく、秋、桜の林に行くと桜餅の香りがしてきます(他の季節でも香りますが)。
落ち葉が濡れて分解されているからか、桜餅の甘い香りが林からしてきます。

ちなみに、桜餅にそっくりなにおいを持つ植物が他にあります。
それは、トンカビーンズと言う、中南米産の豆を乾燥させたものから溶剤抽出します。
トンカビーンズはアロマセラピーでは使用しませんが、フレグランス業界では非常に重要な香料です。
甘く、パウダリーで高級感があり、柑橘系の香りとよくなじみます。

ところで、自然の香りはいたるところで発せられているのですが、注意を向けないと気が付かないくらいのほのかなものも多いのです。
それをその場で楽しむのが私は好きですが、時々、この香りの精油が欲しい!と思うことがありますが、ないのです。
精油の収油率[抽出できる精油の割合]が低すぎて、コストと手間がかかりすぎて、誰も作らないのです。

アロマセラピーで使う精油は収油率が高いものが中心です。
たとえば、ラベンダーでは、植物の重量の0.7~0.85%です。
ところが、ローズではこれが、種類や抽出法にもよりますが0.01~0.05%前後です。
ですので、ラベンダーとローズの精油の価格が何倍も違うのも納得がいきますね。

芳香植物を水蒸気蒸留すると、主に植物の揮発性の高い香り成分(香りやすい成分)が濃縮されて、
かなりインパクトの強い香りに変身します。ある意味、不自然なくらいの香りの濃度ですので、
そのままよりも、再び薄めたほうが、より自然に近い香りになります。
たとえば、収油率が低いローズはしっかり薄めたほうがちょうどよい、心地よい香りになりますよ。

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Author / Kazue Gill

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June 23 2021

初夏の香り

人があまりいないところを歩いていても、マスクをしていないとなんだか罪悪感を感じてしまうコロナ禍の日常。
本当は初夏のこの時期、マスクを外して歩くと色々な素晴らしい香りに出会えるのです。
先日奈良の新薬師寺を訪れたときに出会った香りが二つありました。

 

一つ目。
春日大社のうっそうとした森を抜け、新薬師寺に向って奈良らしい土塀の続く小さな道を歩いていた時、どこからともなく爽やかでフルーティなにおいがしてきました。
ふと見上げると土塀の向こうに一本の木があり、その木に薄黄色い小さな花がたくさんついていました。香りはそこからしてきているようです。
そして、もっと驚いたのは、音です。
それはその花の蜜を吸うために集まった無数の蜂のブーンブーンといううなるような音。
香りと音に圧倒され、しばし見上げていると、その家の二階の部屋のベランダに女性が出てこられたので、この木は何という木なのかをお聞きしました。

その木はケンポナシという木で、10年くらい前、お庭に新しい木を植えるときに、植木屋さんが、お宅だったらちょっと変わったものがいいよと薦めてくださったのがこの木だったそうです。
初めて聞くケンポナシという名前の木、早速ググって見ました。クロウメモドキ科の植物で、韓国伝統茶として飲まれ、二日酔い、肝臓に良い、などと書いてあります。

日本メディカルハーブ協会JAMHAのHPには『果実は球形の核果だが、果肉はほとんどない。
代わりに果柄が太く折れ曲がって肉質になり、冬に熟し、果実が黒色になり、果柄は梨の香りがする。
名前の由来:肥前(佐賀県、長崎県)地方では、ケンポコナシと呼ぶ。
(ケンポコナシってちょっと愛嬌のある名前!)
薬効など:利尿、解毒薬として二日酔い、嘔吐、口渇、大小便不利に用いる。
民間薬でこの果柄および果実を煎じてのむと酒毒を解し、悪酔、二日酔によく、嘔吐を止める作用があるといわれている。』 と書かれていました。

果柄とは果実の茎の部分のことで、確かに、その家の方も、「実はなりますが、実を食べずに、その実の茎の部分を食べると、かりんとうのような味がしておいしいのですよ」とおっしゃっていました。
さらに、ググってみると、ケンポナシ抽出物が、ロッテのフラボノガムに入っており、お酒を飲んだ時のアルコール臭を消す効果があると書いてあります。
とにかく、いつまでも香りを吸い込んでその場を離れがたい様子の私の姿に、家の方が少しお分けしましょうかと言ってくださり、花の咲いた枝を少し分けてくださいました。
やった~!!何の香りだとはピンポイントでは言えないのですが、それはまぎれもなく初夏の、涼しげでなぜだかとても懐かしい香りなのです。

そして、新薬師寺へ。境内へ入ったとたん、またまた芳香がしてきました。
こんどは入り口近くに植えられていた菩提樹の花が満開で、それが天の香りを放っていました。
菩提樹といえば、お釈迦様が悟りを得たときに座しておられた場所に生えていた木とされています。

ただ、新薬師寺にある菩提樹は、おそらくですが、それとは遠い親戚と言われている、
リンデン、学名Tilia europaea、というヨーロッパではよく街路樹になっている西洋菩提樹の方ではないかと思うのです。
なぜなら、気候的に、インドボダイジュは冬寒くなる日本では育たないらしいのです。
どちらにしても、西洋菩提樹の花の芳香はとてもリラックスする、鎮静作用が高い香りとして、アロマセラピーでも使われることがあります。

ただし、リンデンの場合、液体二酸化炭素や化学溶剤を使用して香りを抽出したエクストラクトやアブソリュートしかなく、厳密には精油ではないため、本来のメディカルアロマセラピーでは用いません。でも、香りを楽しむにはとてもおすすめの香りです。
奈良で出会った二つの香りは、夏の初めの記憶の香りとして私の海馬のどこかに確かにしまわれました。

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Author / Kazue Gill

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June 04 2021

幸せの香り

その昔、まだ自分がアロマセラピーに出会っていなかった頃のことですが、夫とネパールへバックパッカーの旅をしたことがありました。ここで私は二つのビビッドな香りの体験をしました。
あるネパール人の音楽教師のお宅に招かれたときのことです。その方の応接間は、ほとんど家具や装飾品がなく、コンクリートのたたきの床の非常に質素なお部屋でした。

たった一つ、その方が鉛筆で仏陀のお姿を描いた絵が壁の上の方に飾ってありました。仏陀はルンビニというネパールの地で誕生されたのです。このような、一見殺伐としたお部屋だったのにもかかわらず、私はとてもリラックスして、ふんわりとした幸福感で満たされていたのです。なぜでしょうか?

 

その理由がお部屋を出るときに分かりました。出窓に置かれた一輪挿しの花器に、白い花が一つだけ生けられていて、そのお花から天国のような素晴らしい香りがしていたのです。それは今思えばクチナシの花のようでした。
たった一つの花から放たれる芳香がこれほどまでに幸せな気分にしてくれたことに驚きを覚えました。

 

また、ネパール滞在中、アンナプルナの周りを巡り、5,400メートルの峠を越える17日間の長いトレッキングに行きました。かなり辛いトレッキングでしたが、自然の壮大な美しさはそれだけの価値がありました。
その最終日、緑の水田が広がる終着点の村が見える丘の上に来た時に、何とも言えない幸福な気持ちになりました。
そこにはキンモクセイの大木があって、その木から素晴らしい香りがしていたのです。
私はいつまでもそこに立ち続け、幸せな気分に浸っていたい気持ちでした。

香りだけでこんなに幸福な気分になれるとは!
その後、私はアロマセラピストになりました。

 

世の中にはストレスや過労にさらされてウツになってしまう人がたくさんおられ、ウツの原因や予防、治療の研究がたくさんありますが、その中でアロマセラピーの研究者により、精油の香りが脳に与える影響の研究も少なくありません。
ジャスミン、イランイラン、ローズやグレープフルーツの香りは、脳の中でエンケファリンやエンドルフィンという神経伝達物質を増やすことが知られています。
この二つの神経伝達物質の共通点は、鎮痛、抗ウツ、そして幸福感を惹起する点です。

なぜ、植物の香りがそのような変化を私たちにもたらすのか、そこには必ず理由があるはずです。動物である私たちは植物がサバイバルするために操られているようです。花は受粉により実をつけ、実は種として拡散させるという、植物が子孫を残すために必要なものです。植物は動けませんから、昆虫から哺乳類まで、様々な生き物を引き寄せ、その手伝いをさせるのです。その誘引手段の一つが植物の放つ香りなのです。

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May 25 2021

背筋を大切に

京都嵐山に住んで26年、このあたりは禅宗のお寺も多いので、若い修行僧の雲水さんを電車やバスで見かけることが良くあります。
彼らは皆、背筋がスーッと伸び、その姿がとても美しいのです。おそらく、それは毎日の座禅によるものでしょう。
長時間同じ姿勢で座っているためにはもっとも体に負担の少ない姿勢が自然と身につくのです。

正しい、美しい姿勢は気の流れや、血流、リンパ流、神経伝達、がもっとも滞りなく流れていくための条件です。
姿勢に歪みがあると、それらがどこかで滞ってしまってうまく流れない、伝わらないのです。
そしてその先にある組織や臓器の健康維持に影響します。

身体の軸である脊柱は真横から見たときに適度に頸椎が前湾、胸椎が後彎、腰椎が前湾しており、頭蓋がちょうどその真上にバランスよく乗っている状態が正常です。
また、前から見たときに頭頂から脊柱の尾骨までが一直線にあることが理想です。
さらに言うと、足までのラインが正しい位置にあることが健康的な姿勢です。
このラインのことをプラムラインやアライメントと呼びます。

スマホが普及してから、このアラインメントが崩れている人が増えています。
頭が前に出てうつむき加減になる結果、アライメントが崩れて首肩こりや腰痛、頭痛、疲労につながっていきます。
これが崩れていると、必ず複数の筋肉に負担がかかって、それが不調の原因を作っていることも多いのです。

また、私はボディトリートメントでは脊柱の両脇への施術を丁寧に行います。
そこは脊柱起立筋という重要な筋肉があるからだけではなく、脊柱は末梢神経の出口でもあるからなのです。
中医学でも、脊柱の両脇にはたくさんのツボと経絡が走っていますのでその重要性がわかります。
このような知識と技術があるとセルフケアにも、クライアントケアにもとても役立つのです。

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コロナが蔓延を始めて一年が過ぎ、その間に私たちも様々な変化を余儀なくされました。人と触れ合うことが制限され、インターネットで出来ることで人々のニーズに対応する行動が多くなりました。私達アロマセラピストはその中でどのようなスキルを開発して行けばいいのでしょうか?
また、どのように精油を、トリートメント技術を活用することが出来るのでしょうか?

 

「人にトリートメントが出来ない時でも磨けるスキル」

皆さんはセルフタッチングをしていますか?
普段、自分で顔のマッサージをしたり、足のマッサージをしたりしてセルフケアをしている方は少なくないと思いますが、それは機械的なマッサージであって、いたわっていることとは少し、違うかもしれません。
JEAでは、お客様の身体に触れるとき、心を込めて優しく、いたわるように触れるように皆さんにお伝えしています。
圧が強すぎないか、雑なタッチングになっていないか、注意を払いながら行っていただいています。では、自分にマッサージをする際はどうでしょうか?
意外に注意散漫で、自分の身体を物のように扱っていませんか?
自分の身体は、数十年間もの間、がんばってきてくれた大変にありがたい、私たちの魂を入れる聖なる器です。自分の体重を支え、移動するためにせっせと働く足、重い荷物を持って頑張る肩、自分の感情を表すために、または隠すために使う顔、そして、PCやスマホを見るためにしたい放題、酷使している目、様々な食品を放り込んでやれば黙々と消化してくれる消化器、様々な外部の環境の変化、時間、私たちの行動に対して、ちゃんと対応してくれているホメオスタシスの機能など。失ったら初めてそこでそのありがたさに気づくことばかりです。
コロナ禍を経験する中で、いかに普通の生活を送ることが幸せだったのか、ということをかみしめている方も多いと思います。私たちの肉体の働きも、当たり前のことと思うのではなく、大事にする必要性を認識して、感謝しながらマッサージをすれば、自然にそのタッチは繊細で優しいものになります。
ありがとう、ごめんね、感謝しています、という気持ちでセルフマッサージをしたり、調子の悪い自分の身体の部分に優しくいたわるように触れてみてください。
そのとき、自分の手の持つ癒しの力に気が付くと思います。

 

「香りを作る仕事」

JEAの母体であるサンリツの業務である、スパ・サロン部門や、スクール部門は、コロナでマイナスな影響を受けましたが、商品部門は、インターネットの販売が好調です。
これ一つ見ても、インターネットで出来ることがコロナをきっかけに増えたということがわかります。この先、コロナが収束したとしても、インターネットを介したビジネスは発展を続けることは間違いないでしょう。
たとえ、人にトリートメントをして差し上げられなくても、私たちには精油を使って人に喜んでいただくことが出来ます。対面でカウンセリングをするのが一番ですが、もし、それがかなわなかったとしても、オンラインでカウンセリングを行い、クライアントにピッタリの精油を選んだり、ブレンドのフォーミュラ(※)を作成させていただけます。 ※ブレンドレシピのこと
相手のニーズや香りに対する嗜好、香りの記憶などをしっかりと把握することが重要ですので、それを繰り返し行うことで、コンサルテーションスキルも、ブレンドスキルも身についていきます。

 

CELEBRATIONDAY

〜JEA25周年記念ブレンドについて〜

この香りはCELEBRATION DAY 「お祝い、ハレの日」という意味のとおり、老若男女の方々にとって幸せで特別な日に香らせていただくことを目的として考えました。
日本人は爽やかで落ち着く香りを好む傾向があります。そのために次のようなチョイスをしました。

バージニアシダーウッドは日本的な、樹木系の落ち着く香りとして、ネロリとベルガモットを幸せな気分にする香りとして、メイチャンはかんきつ類ではないですが、レモン様の爽やかな香りを演出するために、そしてリナロールを主成分とするホーリーフは、アルデヒド類を主成分とするメイチャンのクエンチング作用と共に、女子っぽくなりすぎずに若干のフローラル調をプラスするために加えました。
そして全体として日本人の感性にマッチする香りが出来上がりました。ぜひ、皆様もご利用くださいね。

 

>>JEA25周年記念アイテムの詳細はこちら

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Author / Kazue Gill

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アロマセラピストであり、リンパドレナージセラピストである私にとって、コロナ感染者が苦しめられている様々な症状の中に、注目すべき嗅覚障害、脳の障害があります。

また、これ以外にも、様々な命に係わる深刻な障害がなぜ、起きてくるのか?

それは、ただ、受け身的にニュースを見ていてもわかりません。

それを知るには科学的な研究論文を調べることがもっとも理にかなっています。

そうして調べた専門家の研究論文のいくつかが、答えを与えてくれました。

この二つの障害に注目して調べていくうちに、基礎疾患を持つ人や高齢者が重症化しやすい理由も見えてきました。

どうも、サイトカインストームだけが理由ではないようです。

そして、感染予防ばかりに目を向けるのではなく、そもそもコロナに負けない身体を維持するために、最低限すべきことも見えてきました。

 

まずは感染によって細胞レベルで何が起きているのかを研究論文を読み解きながら考えました。

 

あのACE2受容体はどこにある?

そもそも、コロナウイルスがヒトの細胞に侵入し、増殖するには細胞にACE2という受容体が存在する必要があります。これはニュースなどでも報道されています。

コロナウイルスの表面にある、スパイクという突起がヒトの細胞の表面にあるACE2という受容体と結合することで、細胞膜が開き、ウイルスのRNAが細胞の中に送り込まれて、細胞の中でウイルスの遺伝子を複製し新たなウイルスを多数増殖し、それが細胞の膜を破って(細胞は死にます)外に飛び出し、他の細胞に侵入する、ということを繰り返すのですが、このACE2受容体のない細胞にはウイルスは侵入できないのですが、残念ながら、ヒトの細胞にはACE2受容体を持つものが多いのです。

特に多いのが神経細胞を助ける細胞や血管壁の細胞です。血管がウイルスにやられてしまっては細胞は生きていけません。

 

嗅上皮が損傷する

コロナウイルスによって嗅上皮が損傷される、だからにおいや味がわからなくなる、ということはずっと言われてきましたが、具体的に嗅上皮の何が損傷されるのでしょうか?

アロマセラピーの勉強をした方なら、嗅上皮には嗅覚を伝える嗅細胞だけではなく、支持細胞sustentacular cellsが存在することをご存知でしょう。

実は、嗅細胞、そして嗅球にはACE2受容体はないのです。

コロナウイルスは嗅細胞ではなく、ACE2受容体を持つ支持細胞や基底細胞に感染しているのです。

これらの細胞は嗅神経の代謝を助けたり、損傷された嗅上皮の修復を行っていますので、嗅細胞そのものが感染していなくても、これら、嗅神経をサポートし、粘膜を維持する細胞が感染するために、嗅上皮が損傷、脱落してしまう。その結果として嗅覚が失われてしまうのではないかとの見方が出てきています。

https://hms.harvard.edu/news/how-covid-19-causes-loss-smell

 

ペリサイトが症状の悪化や後遺症の鍵を握る?

ペリサイトとは身体の血管の内皮細胞に張り付き、取り囲むように存在する細胞です。

そして血管内皮細胞の分化や増殖を制御しています。ACE2受容体はペリサイトにも発現しています。

脳においても、脳神経そのものはACE2を発現していませんので、コロナウイルスに攻撃されることはありません。一方、このペリサイトが脳神経の為に大変重要であることが指摘されており、ペリサイトが感染することで、脳神経がダメージを受けると考えられます。脳におけるペリサイトの役割は、

 

①血管新生と血液脳関門BBBの形成と安定化

血液脳関門は神経細胞を異物から守るための構造と機能です。また、血管も細胞が生きるためにはなくてはならないものです。

 

②脳の血流制御

神経活動に応じ、血管壁を拡張したり、収縮したりして脳の血流を調整しています。この機能が失われれば、神経細胞が必要とするものが血液によって運ばれにくくなる可能性が考えられます。

 

③多様な因子を生産、分泌する

神経栄養因子、増殖因子を分泌することで、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど、神経細胞の機能や分化に影響を及ぼします。また、さらに重要なことは、炎症細胞に対し、抗炎症作用を有する分子群を分泌し、炎症の終焉組織修復促進作用を発揮することなのです。

 

コロナウイルスの感染がすでに無くなった後も、精神状態の異常や嗅覚異常が継続するなど、不可解な症状が続く人がいます。それらを調べていくと、例えば、脳の深いところで炎症が続いている例が報告されています。ブレインフォグ(脳の霧)と呼ばれる状態が起きているとみられています。おそらく、ペリサイトがウイルスによって損傷を受けた結果、ウイルスが消えた後もなかなか炎症を終焉することができず、炎症が続いているのではないかと考えられます。ちなみに、話がそれますが、うつ病と脳内炎症の関連性が以前から指摘されています。

 

ブレインフォグhttps://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/nhkspecial_1108/detail/detail_01.html

 

ハイリスクグループとペリサイト機能障害

既に報道などで、基礎疾患がある人や高齢者が重症化しやすいことが伝えられていますが、具体的な理由はあまりニュースでは聞こえてきません。

免疫力の低下?どうもそれだけではないようです。どうも、ペリサイトの機能障害が関係しているのではないかと思われます。

 

参考論文「ペリサイトは脳機能にとってなぜ重要なのか? 吾郷哲朗」https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/59/11/59_cn-001357/_pdf/-char/ja

 

ペリサイトの機能障害は次の要因によって起きるとされています。

①加齢 

細動脈硬化、心機能低下、大血管狭窄などによって、細小血管、毛細血管レベルでの低灌流が起き、それがさらなる低灌流を招きペリサイト機能が減弱する。

 

②高血圧 

血管の硬化を招き、①と同じような結果となる

 

③糖尿病 

糖尿病性細小血管障害により、①と同じような結果になる。糖尿病性網膜症はペリサイト障がいの代表的疾患であり、BBBの破たん、血液成分の漏出などを認める。また、高齢者で抗血小板薬の不用意な使用によっては、ペリサイト障害の原因になるとも考えられているようです。

 

④脂質異常

アルツハイマー病や高齢者の認知機能低下に関わる遺伝子の中でもっとも強力とされている遺伝子、アポリポ蛋白Eは、脂質代謝やコレステロール代謝の調整に重要な役割を持ちます。脂質代謝の異常を起こす遺伝子は日本人の10~20%にあると考えられています。

脳ではアストロサイトが神経細胞、オリゴデンドロサイト、ペリサイトが必要とするHDLとしてコレステロールを供給しているため、脂質代謝異常があると、コレステロールの供給がうまくいかず、これらの細胞も弱り、BBB機能障害や微小出血のリスクにもなると考えられています。

 

アポリポ蛋白Eと精神神経疾患

https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1130080773.pdf

 

 

というわけで、コロナウイルスに感染した際に、微小血流にすでに問題があるリスクグループでは、それがさらにウイルスによってどれくらい障害されるかということも、重症化の程度に影響していると言えそうです。

血液は命の源、そして、血管はそれを細胞一つ一つに送り届ける重要なパイプです。中高年は普段からこのパイプが詰まったり、固くなったり、細くなって流れにくくならないようにメインテナンスをすることが、コロナに感染した際にも重症化を防ぐことにつながるのではないでしょうか。

 

 

ACE2へのコロナウイルスの結合をブロックする精油

2020年6月、米国US National Library of Medicine National Institute of Healthに掲載された基礎研究論文で、上皮細胞を使って10種類の精油が細胞のACE2受容体の応答能を低下させるかどうかを実験したものがあります。この研究結果では、レモンおよびゼラニウムの精油、さらに二つの精油に含まれるシトロネロールおよびリモネンが応答能を顕著に低下させたことを報告しています。これらの結果はSARS-CoV-2 / COVID-19の人体への侵入の防止に寄与する可能性がある貴重な天然抗ウイルス剤であることを示唆しています。

 

PMCID: PMC7355681

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7355681/

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January 18 2021

2021年が明けました

コロナで世の中がひっくり返ってしまった2020年。
たくさんの方がお亡くなりになり、職や収入を失い、大変つらい、悲しい経験をしました。

この経験を通して、皆様は何を考え、気付かれたでしょうか?
私はと言えば、今までは当たり前の日常が当たり前すぎて忘れていたこと、つまり、いかに、私たちが幸せだったのかに気づかされました。普通に仕事をし、友達に会ってご飯を食べたり、連休には家族や友人と一泊旅行にでも行く、そのような平凡で穏やかな毎日。お店に行けば食べるものが豊富に手に入り、安心して眠ることのできる家がある。それが当たり前ではなく、いつ、なんどき失われるかもしれない事でもあったことに気付かされたのです。

今まで、いろんな情報が目や耳に入ってくると、うらやましく思ったり、もっとこうなりたい、ああしたい、こうだったらよかったのに、などと、自分に足りないところに心が囚われていました。
でも、今の目の前の幸せをかみしめないのはもったいない、自分はなんと今、幸せなのかと心から思えるようになりました。
将来のことはわかりません。わからないことを心配して不安になるのは意味がありません。

2020年はオンライン、バーチャルでなんとかしのぐしかないと、やっているうちにその良さもわかったり、一定の価値や便利さもありましたが、やはり、実際に触れたり、味わったり、匂いをかいだりすることが人間にとっては自分の現実をあるがままに理解することや心のバランスを保つことにつながると、今まで以上に強く感じています。

赤ちゃんが何でも口に入れるのは、それが何かをしっかりと確認しようとしているから。生きものにとって、触った感覚やにおい、味は、今、ここ、を判断するにはもっとも信頼できる確かな情報なのだと思います。
皆さんはフムンクルス(ホムンクルス)をご存知ですか?このモデルは、人間の皮膚や口などの表面にある感覚神経からの情報がどれだけ大脳皮質上を占めているかを大きさで表現したものです。

フムンクルス(ホムンクルス)
これを見れば、人間の唇、舌、手に特に感覚神経が豊富にあることがわかります。触覚、嗅覚は精妙で複雑な情報を私たちに与えます。それを通じて私たちの心に与える影響や癒しは、どれだけ世の中がバーチャル、AIや機械が発達しても他で代用できるものではありません。
思考に偏りすぎないこと。つまり、頭で考えることだけに頼ってしまわないようにすることが人間にはとても重要なのです。心のバランスを失いそうになったら、触覚や香りの感覚を通じて今、ここ、に心をもどせばいいのです。

人間の心は決して物質的なものだけでは満たされないのです。慈しみと思いやりの心を持って触れられる、触れることが私たちの心に深い安堵感と一体感をもたらすことを世の中にもっと知ってもらいたいと思います。そして、2021年はさらに、嗅ぐだけのアロマセラピーが注目されていくでしょう。
2020年秋からアロマインヘーラー(ネイザルインヘーラー)をAromaShopでも販売し始めました。

アロマインヘーラー

この、インヘーラーはスティック状のもので、中の芯に精油を10~20滴ほど付けたものを嗅ぐ形です。部屋に香らせるアロマディフューザーと違い、においが部屋全体に拡散しないため、他の患者さんに迷惑をかける心配がとても少ないのです。
欧米では5、6年前から病院を中心に頻繁に使用されるようになっています。
IFPAの名誉会員であり、また、クリニカルアロマセラピストとして世界的に有名なリヤノン・ハリス氏の講演を聞いたのが3年前、スコットランドで開催されたIFPAカンファレンスでした。ハリス氏の発表では、このインヘーラーのように、セラピストがブレンドしてお渡しした精油の香りを、入院中の自分で嗅ぎたい時に嗅ぐツールが紹介されていました。
匂いを嗅ぐことは、もちろんメンタルにも働きかけますが、それだけではありません。患者の血中酸素濃度の低下、疼痛、吐き気、気道の炎症や感染、体重低下、禁断症状、嚥下困難などの緩和にも用いられているのです。
アロマインヘーラーは病院で患者さんが精油の香りを嗅ぎたい時にいつでも自分だけが嗅ぐことが出来る、「胸のポケットに入るアロマセラピスト」なのです。
病院では、患者は常に病院の管理下に置かれ、自分が主体的に何かをする機会があまりありません。
そのような中で、必要に応じて患者が香りを嗅ぐことができる自由がある、ということは、患者のエンパワーメントでもあり、重要です。このようなアロマセラピーの形に対応できるセラピストを育てるために、クリニカルアロマセラピーでありながら、ホリスティックなアプローチでパーソナルなブレンドを作るスキルを磨く新講座「ホリスティックコンサルテーション&ブレンディング講座」を2020年12月から始めています。私も製薬会社の注文で嗅ぐだけのブレンドを何種類も創作しました。2021年はいよいよ、これらのブレンドが発売になりますので、詳細決まり次第お知らせします。

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Author / Kazue Gill

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今日は本社で仕事です。
大きく開け放たれた窓からは、キンモクセイの香りが爽やかな秋のそよ風と共に流れてきます。
これだけで幸福感に満たされております。

今月、21日、私の作った新しいブレンドが発売になります。
「ハイジェニックドロップ」、本当はアマビエブレンドと呼びたかったブレンドです。
切り立てのレモンスライスのようなクリーンな香りです。
ハイジェニックとは、衛生的という意味の英語で、海外で実施された研究で効果が認められた精油をそのまま合わせてみました。
余分な精油を入れるような小細工をしていない直球ブレンド。
今日、作成している次なるブレンドは、製薬会社からの依頼で、訪問看護でのマッサージに看護師さんが使用するブレンドです。
高齢者の方など、在宅の患者さんが多く抱える症状に対応する作用があって、かつ、安全、かつ、リーズナブルなお値段、というお題に答える組み合わせを考えています。

オンラインショップ(Aromashop)、スクール店頭にて販売予定です。

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Author / Kazue Gill

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コロナ渦中ですが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?

アロマセラピストとして、人間の健康について四半世紀!?追及してきたおかげで、テレビやニュースの情報に翻弄されて一喜一憂せず、冷静に情報を仕分けし、分析し、自分なりの考え方を持ち、精神的に安定した状態を保つことが出来ています。
すべての出来事は必然である、と言われていますが、このコロナ騒動も災難には違いありませんが、私たちの進化を促す大きな課題として考えることが出来れば、「災い転じて福となす」、私たちは良い方へと変わっていくことが出来るでしょう。
私にとっては、昨年からインターネットでの授業、スクールに来られない方でも学べるアロマセラピーの形を突き詰めたかったのが、コロナで強制的にその方向にコマが進められた形となりました。

もともとのアロマセラピーは皆様ご存じのように、フランスで精油を薬として使用することから始まっており、そのころのアロマセラピーはマッサージとは関係のないものでした。
タッチの力は本当にすごい。香りと同じくらい、人間の原始の脳に強く影響し、私たちの健康とウェルネスをはぐくむ力があります。私は人にトリートメントすることが大好きですが、あえて今、香りの力に立ち戻って、その可能性を広げる新しいコースを構築しています。
それが、IFPAの新しい資格コースです。このコースは精油にフォーカスした理論オンリーのコースであり、トリートメントの授業がありません。ですので、通学での受講だけでなく、Zoomでもオンラン受講が可能ですから、日本のどこにお住まいであってもすぐに受講できるのです。

そのコースの中に、この冬から新たに設ける6時間の講座があります。コンサルテーションとブレンディングを学ぶ講座です。この講座は今までのIFPA資格対応コースを受けている方には、重要なポイントはすでに授業に含まれているので必要ありませんが、これから理論オンリーのIFPA資格取得を目指している方はもちろん、そこまでは考えていないけど、しっかりクライアントの主訴に合わせた的確な精油のブレンディングを学びたい、という方にお勧めです。
JEAのブレンドデザイナー講座の要素も含まれています。

リモートでアロマセラピストとしてクライアントにブレンドを提供したり、香りのプロデュースを仕事にするための勉強にもなるでしょう。この講座ももちろん、 Zoomでも受講できます。
香りと心のつながりは、香りと結びついた記憶にも大きく影響を受けます。ですので、一人一人の記憶も含めたパーソナライズされた香りを作る事は精油によるメンタルケアの重要な鍵となります。

とはいえ、人間は自然から命を得ています。自然と切り離されて生きていくことはできません。パソコンやスマホだけで何もかもがOKになるわけでは決してありません。
幸い、コロナの中でも、自然の中に行くことは可能です。森や草原、川のほとりを歩いて出会う香りは、精油のビンから嗅ぐ香りの代わりになることはありません。
日本の森には古代から香りを持つ薬草がいくつもあります。それを探して歩いてみる、というのも楽しいものです。
ぜひ、この秋、自然の中に出かけてみましょう。

↑ 8月17日〜31日、オンラインで開催されたIFPAウェブカンファレンスで、「懐かしい香り」の研究を発表する大場健太郎先生の東北大学の研究室です。香りを嗅いだ時の脳の活動を調べるfMRIの装置を体験している私の写真です。カンファレンスでは他に、香りを嗅ぐことで脳内セロトニン(うつ病で減少する物質)が分泌されることを確認した研究、学習障害児や自閉症の子供へのアプローチ、患者への寄り添いの重要性を示す報告など、アロマセラピーがますますエキサイティングに感じられる発表がありました。

そして、いよいよ10月4日(日)には、生体磁場と癒しの波動について、オーストラリアのヒーラーであるシャーロッテ・ムトロ氏の講座があります。地理的距離を一瞬で飛び越えるZoomと癒しの波動、共通点がありますね!

>>詳細はこちら

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「人の役に立ちたい」と考える人にとって、セラピストはとても魅力ある職業です。
特に、ストレス社会と言われる現代の日本においては、そのような癒しに対するニーズは高く、
「セラピストの力を借りて前向きな気持ちを取り戻したい、元気になりたい、辛い症状から解放されたい」と、
サロンを利用されている人達はたくさんいます。また、近年では病院や施設の中で、
辛い闘病生活をされている患者さんに対して、心の支えとしてのマッサージやアロマセラピーを行うことも多くなってきています。

セラピストを目指してスクールに入学される方々の中には、かつてセラピストに癒された、アロマセラピーで元気を取り戻したから、自分もセラピストになって、心と体の疲れた人たちを癒してあげたい!という動機をお持ちの方が多いのです。かつて私もその一人でした。

人を癒してあげたい!という強い思いは、セラピストにとって最も大切な動機です。人が元気になっている姿を見ることが本当にうれしい! そう思えることがセラピストにとっての幸せです。しかしながら、実際、それだけでは、セラピストとして仕事に就いて、日々、心身の疲れや問題を抱えたお客様のケアを出来るわけではありません。

自分がセラピストになれるかな、と考えたとき、セラピストに求められることがどのようなことなのかを、まず知る必要があります。そのうえで、ご自身がその力を付けるだけの努力と覚悟を持てるかどうか、そしてその中にもやりがいと喜びを感じることが出来るだろうか、と考えてみてはいかがでしょうか?

<お客様と一対一で向き合うことが出来る貴重なお仕事>

私たちの生活は今、人とのコミュニケーションも、買い物も、様々な社会的サービスも急速にデジタル化、機械化していますが、その結果、私たちは暖かな心のつながり、人との肌のふれあいの機会を奪われてしまっています。これによって、私たちの心は不安定になり、健康にも影響が出てきています。

生身で向き合い、五感をすべて使ってお客様に施術をさせていただける、それは今や大変貴重な体験です。わたしたちセラピストはお客様と施術ルームの中で、一対一で、短くても30分、長ければ2時間、3時間と、向き合い、お話を伺い、お身体に施術をさせていただきます。

居心地の良い、静かな施術ルームの中で、じっくりと、何の邪魔も入らず、こんなにもお客様と向き合うことができる、というのは今の、人との接触も心のつながりも希薄になっていく社会の中ではとても貴重で贅沢な働き方なのです。その分、チャレンジの多い仕事でもあります。

お客様とともに過ごす時間の中で、まず、お客様のお困りの事に対して、きちんと耳を傾けて、その根本原因や、お客様の心の状態を正しく把握することからセラピーが始まります。これが中途半端であれば、施術も中途半端になってしまいます。

ここでは「コミュニケーションスキル」が必要になります、と言ってしまうと、あたかもテクニックを身に付ければ誰でも出来る、と思いがちですが、そうではありません。
どれだけ私たちセラピストがお客様に「寄り添う」ことが出来るかどうか、お客様に「信頼」していただいて、心を開いて様々な情報をお話いただけるか、身をゆだねていただけるかどうかが最初のハードルであり、セラピーの効果を大きく左右し、お客様の満足度に影響するのです。

お客様に「寄り添う」ということが、お客様がセラピストを信頼し、心からリラックスし、施術に必要な情報を自ら提供していただくためと、お客様との心の距離を縮めるには最も重要なことなのです。

<寄り添うとは>

私達だれもが、無意識レベルであっても、誰かに自分の辛さや悩みをわかってほしい、と願っています。お客様もそれは一緒です。

お客様に寄り添うということは、お客様の目線に立ち、お客様の声を聴く、そして、お客様の傍にいる、と言うことです。セラピストが多くの場合、ここで失敗するのは、お客様の問題を自分の価値観で判断してしまうからなのです。寄り添うこと、それは「言うは易く行うは難し」です。

マイペースで物事を進めたいタイプの人はこの部分では努力が必要と言えます。主役はあくまでもお客様です。自分はお客様が元気になるためのサポート、支えとなる。自分がその立場にいることに喜びを見出すことが出来れば、セラピストは本当にお客様のお役に立ち、同時に、セラピスト自身も生き生きと仕事が続けられるのです。

<健康と美、ウェルネスを追求し続ける>

本物の美しさは健康に根差しているものです。それを手に入れたいと誰もが心の中で願っているはずです。ですからセラピストは「健康とは何か」に対して深く、広く学び、考え続けることが必要です。病気がないということが健康と言う意味ではありません。逆に、病気を持っていても、健康で、ウェルネスを得ることが可能です。ウェルネスとは、幸福な気分で心身ともに活き活きとして生きている状態です。そのウェルネスを目指すためには、生活そのものの変容も必要かもしれません。食べること、環境問題、運動、姿勢、心、すべてに興味を持ってやまない人は、自然に健康に向かっていくことでしょう。

健康についても美についても、常に新しい発見がありますから、一度学んだから、もうわかったつもりになるのではなく、柔軟さと広い視野を持ってアップデートし続けることが必要です。成長するセラピストはお客様への施術やアドバイスにも磨きがかかり、お客様にもより頼もしい健康のパートナーと思っていただけます。

<まずは自分の心と身体の健康状態を見つめる>

この世の中に心も身体も100%問題ない、という人間は一人としていないでしょう。自分は大丈夫、と思っていても、客観的に見たら課題がいくつかある、というのが人間であり、当たり前なのです。重要なことは、自分でそれに気が付いているかいないか、なのです。セラピストにはそれに気が付いていてほしいのです。

お客様の健康をサポートするはずのセラピストが、自分の心身の健康状態を客観的に把握していなければ、お客様の健康状態も正しく認識できないでしょう。

自分自身の課題と向き合い、改善の努力をする、ということが、健康の専門家である自分のセラピストとしての力となります。セラピストに課題があることは恥ではないのです。もともと課題がたくさんあって、それを克服、もしくは改善してきた経験のある人のほうが、お客様の心身のトラブルに対し、より共感的に、より的確な対応ができ、優秀なセラピストになれるのです。

<体力仕事>

セラピスト、というと、なんだか、素敵感があって、優雅なお仕事だと思う方が多いと思います。ですが、実は、毎日、何人ものお客様に施術をする。ということは、身体を使う、肉体労働なのです。

セラピストが施術を行う際、実はマッサージをする手の動かし方よりも、身体の使い方を習得するほうがもっと根本的に重要なのです。すでにセラピストとして働いている人の中にも、それがうまくできていない方は多いのです。

まだ20代であれば、それほど問題には感じられないのですが、30代、40代、50代と、齢を重ねていくと、基礎的な体力や身体の柔軟性などが低下していくため、疲れて続かない、手や腰が痛くなる、など問題として表面化してきて、施術を続けることが難しくなることもあります。

一流のスポーツ選手やダンサーも、まず、身体の動かし方の基本を身に付けなければ成長することが出来ません。なぜなら、それを怠ると、高いスキルの動きが習得できなかったり、身体の一部に負担が集中し、怪我や故障、疲労の度合いが上がるため、長続きしないのです。

家族にマッサージをしたら、数分であっても疲れた、という経験のある方は少なくないでしょう。セラピストの施術はその何倍もの時間ですから、しっかりとマッサージに必要な筋肉をつけ、効率的な身体の使い方を習得していく必要があります。また、これを通じて、自分の体力も向上し、疲れにくい身体が作られていくので、普通の方に比べ、齢を重ねても、故障が起きにくく、仕事の為の努力が、結局は自分自身の健康を守ることに繋がっていくのです。

<気力仕事 しなやかな心が強い心>

人間は一人として同じ人がいないように、お客様の健康状態も、性格も、心の状態も、すべて違うため、セラピストにとって毎回の施術が初体験です。リピートしてくださるお客様であっても、その日によってメンタル面も、疲労度合いも、身体の状態も変わります。

そして、サロンにわざわざいらっしゃるということは、辛いから癒しを求めていらっしゃるのであって、辛い時ほど、人は他人に対して攻撃的になりやすいわけですから、そういったお客様も受け止めるしなやかな精神力が必要です。

また、同じ施術をしても、相手によって、喜んでもらえるときと、不満足になってしまう時があります。ですので、マニュアル人間では決して良い仕事が出来ません。どのようなお客様にも満足していただくための改善を目指して工夫することに喜びを感じる、という性格はプラスに働きます。

また、小さな行き違いやミスでお客様に不快な思いをさせてしまうことになって、お叱りを受けることもあります。
そんな時、事実をそのまま客観的に把握し、「お客様に心よりお詫びする謙虚な気持ち」「何がいけなかったのか」「次に同じ失敗をしないために何をすればそれを回避できるか」だけを考えるようにする冷静な受け止め方をする訓練が必要です。

いつもはうまく行っていることを一回、二回失敗しただけで、「ああ、私って駄目だ」「能力がないんだ」と考えてしまうと、仕事に対する気力が失われてしまいます。

実は、心のトラブルを抱え、癒しを求めておられる人の中には、こういった極端な考え方の癖がついてしまっている方が多いのです。でも、それは考え方の癖であって、その人の持って生まれた性質ではないので、訓練によって克服することが可能です。これを認知行動療法と言います。

身体の慢性的なトラブルを抱えている人たちの多くは、その原因を作っているのが心である場合が多いのです。これを心身医学と言い、科学的にも証明されているのです。

ですから、もし、あなたがこのような考え方の癖を持っておられたら、まず、それを克服していくことが必要かもしれません。それがあなた自身の人生を好転させるきっかけにもなりますし、お客様に対する洞察力も深まり、より的確な対応に繋がって、ひいてはセラピストとしての質を上げることになるのです。

<セラピストへの道>

あなたはただ、サロンに就職したいだけなのでしょうか、それともセラピストとして人生を生きたいのでしょうか?それによって、セラピストになるために通る道が変わってきます。

専門知識や技術を学んだことがなく、しかも、サロン勤務も未経験な方に対してもセラピストの求人募集しているところは多く、それに応募して仕事に就いているセラピストもいます。企業側としても、技術は入社後の研修で身につけられるとして、むしろ、人柄や仕事に対する意気込みを買ってくれるケースも少なくありません。

研修を受けた後に現場で働くことが認められれば、いよいよセラピストとしてデビューすることになります。ただし、どんな会社でも、合理性を考えると、研修は最低必要な時間しか行うことが出来ません。ですから、研修を受けただけでは、必要最低限の仕事をこなせるだけの力しかつきません。これが、就職することをゴールとした場合の道です。メリットとしてセラピストになるための投資資金がほとんどいらない、と言うことです。

この場合、セラピストと呼ばれる方々は、基本、もみほぐしを目的とサロンに就職することが多く、どのようなお客様にも、マニュアル通りのコンサルテーションをして、マニュアル通りの施術をしてお返しするだけです。もちろん、それでも1年、2年、仕事に慣れるだけでも時間がかかりますので、その間は成長する自分を感じ、楽しくお仕事が出来るでしょう。この経験は決して無駄にはなりませんし、もし、そのあと、転職したとしても、その方たちにはセラピストとしての一定のスキルが身についているはずです。お客様の接遇にも慣れ、自信もついていることでしょう。

短い研修を受けた何人ものセラピストが同じメニューを提供しているサロンでは、それぞれのセラピストが同じ内容の施術をしなければ、お客様からのクレームになってしまいます。また、出来るだけお客様を回転させて売り上げを上げることが重要ですので、お客様にじっくりと寄り添う、お客様の主訴に合わせて毎回内容を変える余地がありません。
もちろん、中には、自由度の高いサロンもありますが、そもそも、知識も技術も必要最低限しかないセラピストが、自由度を与えられても、結局、より深めた内容の施術を提供することはできません。これが未学習未経験➡研修➡就職の道のデメリットと言えます。

では、セラピストとして人生を生きたい場合、どのような道があるのでしょうか?

たとえば、医者になるためには猛烈な勉強をして医学部に入り、そのうえで、大学で何年も毎日のように勉強してやっとインターンとして現場に出ることが出来ます。あとは現場でまた何年も鍛えられて、勉強会や学会に足を運び、最新の治療について勉強をし、様々な症例を経て、次第に一人前の医者になっていくのです。

セラピストは人の心と身体の健康と美をサポートするお仕事ですから、本来、一定の時間をかけて、専門の講師から深い専門的な知識と技術を学ぶ必要があるお仕事なのです。

想像してみてください。サロン配属の前の短期間の研修を受けただけで、様々な主訴を抱えてサロンにお越しになるお客様に対し、それに見合った知識と技術で対応できるでしょうか? 答えはもちろん、NOです。

結局、本当の意味でのセラピストとして人生を送りたいのであれば、人間の心と身体の癒しについて、まずはしっかりと勉強を行うことが必要なのです。これには当然、時間とお金がかかります。一概には言えませんが、質の高い学校は、セラピストを目指す方には決して安い、短いコースを勧めません。セラピストに必要なスキルを充分身に付けるためにはショートカットはないからなのです。

日本では、マッサージを行うための国家資格を取るためには、2300時間を越える専門的な勉強と国家試験の合格が必要となります。海外でも、米国やヨーロッパの多くの国々では、国家資格ではなくても、最低でも200~300時間勉強や実習をしなければ、マッサージ業を営むことが出来ません。なぜそうなっているかと言うと、お客様に安全に、ご満足いただける施術が出来るセラピストとしてスタートを切るにはそれだけの勉強が必要だからなのです。

いったん、未経験者としてサロンに就職してしばらく働いた方が、そのあと、専門的な勉強をするために、セラピストのスクールに入学されることは良くあります。その方々は、セラピストとして人生を生きる選択をされたのですね。

セラピストとして生きる、ということは厳しいこともありますが、周りも自分も元気になっていく喜びを味わい、自分らしく生きることが出来る一つの素晴らしい選択であると言えます。

Category / アロマコラム

Author / Kazue Gill

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