明日香の香り
長年あこがれていた奈良県明日香村に先月、引っ越ししました。明日香は石舞台をはじめとする多くの古墳や謎の石造物、聖徳太子の生まれた場所として有名ですが、それ以前に、貴重な日本の原風景が今も残っている場所です。
なぜ、この貴重な風景が残っているかと言うと、1980年5月に施行された、「明日香法」のおかげなのです。
1970年代、美しい自然の景観、貴重な日本の文化遺産が多い明日香が開発によって破壊される危機にありました。これに対し、盲目の漢方医御井敬三をはじめとする地元の人々が声をあげ、当時の首相、佐藤栄作に御井氏の肉声による嘆願のテープを送るなどして直訴したことが功を奏し、明日香法が制定されたことで、ギリギリのところで近代化の波に飲み込まれることなく、美しい風景が守られることになったのでした。
私は子供の時に修学旅行で明日香に来た時から、明日香は懐かしい日本の原風景としてずっと心の中にありました。こんな経験から、アロマセラピストになった後、「明日香 香り探検隊」というウォーキングツアーを2回開催するほど明日香に惹かれていました。
田舎道を歩いていると、様々な場所で花や果物、草から、畑から、色々な香りがしてくるのです。ウォーキングツアーでは気が付いた香りをすべてノートに記録し、誰が一番たくさんの香りを見つけられるかを競います。
引っ越しをした9月上旬は葛の花やオシロイバナがいい香りを放っていました。
花の傍を通るとふわっと香ってくる甘い香りは、引っ越しと仕事で疲れた心を元気付けてくれました。9月後半はキンモクセイが香り始めました。キンモクセイは二度咲きすることが珍しくないので、運が良ければ10月下旬に二回目のチャンスがやってくるかもしれません。
オシロイバナもキンモクセイも今年は一枝いただいて部屋の中に生けたので、家に帰ってからもずっと天国の香りに癒されていました。
あとは、長く伸びた夏草を農家の方が刈り取ったあとの香りもとても心を和ませます。
もうそろそろ夕暮れ時に収穫を終えて残った稲のもみ殻や落ち葉などを集めて焚火をしている香りがしてくるでしょう。朝晩、冷え込むようになると、焚火の煙はまっすぐ上昇せず、冷気に抑えられて横に流れ、黄昏の里山にたなびいていきます。
寒くなって、陽も短くなり、今年の終わりが近づきつつあると思うと、もの悲しいような気持ちと、今年もまた大した成果も進歩もないうちに終わってしまいそう!という焦りの気持ちとで、ちょっとブルーになったりもしますが、この焚火の香りと共に、黄昏の里山の風景は心の奥深くにずっと残っていくことは間違いありません。嗅覚神経から記憶の生まれる海馬、そして喜怒哀楽、情動の生まれる扁桃核へとつながることこそが、アロマセラピーの効果の重要な柱の一つなのです。
※明日香の名前の由来
明日香の地名の由来については、もっとも有名なのは安住の宿を意味する「安宿(アンスク)」という韓国語から来ているという説の他にも、インドのアショーカ王の名前を取った、または清々しい、と言う意味の言葉から来ているなど、諸説あります。
様々な技術を持った渡来人が多く住んでいた明日香には、亀石や二面石、猿石、鬼の雪隠など、何のために作られたのかがわからない、不思議な石造物が多く残されていて、古代日本の文化や出来事が何層にも重なっていて、非常に謎の多い場所でもあります。
夏の必須アイテム「シトロネラ」
シトロネラと言えば、自然派の方なら天然精油の蚊除けだとすぐにピンとくることでしょう。
シトロネラはずっと昔からその目的で利用されてきた歴史があります。
イギリス人の夫も1970年代にインドやネパールなどに貧乏旅行していたころは、出発前に薬局で蚊除けのため、シトロネラを購入していました。
シトロネラは和名コウスイガヤというイネ科の植物です。
シトロネラ Cymbopogon winterianus | |
シトロネラル | 39.47% |
ゲラニオール | 23.04% |
シトロネロール | 10.94% |
シトロネラ成分表↓
シトロネラ精油の主成分はシトロネラルというアルデヒド類と、同じく蚊よけの作用があるゼラニウムにも含まれるゲラニオールやシトロネロールというアルコール類です。
蚊よけとしての作用が高いのがシトロネラルとゲラニオールですが、40%近く含まれることもあるシトロネラルは皮膚には刺激性が強く、同じイネ科のレモングラス同様、そのまま皮膚につけることができません。
先日、夜中、寝ている時に蚊が襲ってきて、蚊取り線香を焚くのが嫌だったので我慢していたところ、顔や腕を刺しまくられました。そこでアロマストーンにシトロネラを滴らして顔のすぐ横に置いたのですが、全く効かず、蚊は平気で顔の近くまでブーンと飛んできます。
これ以上、安眠を妨害されたくないので、仕方なく除虫菊の蚊取り線香を焚いたのですが、それでも蚊はすぐには退散せず、しばらくしてようやくいなくなってくれたのでした。
近頃の蚊は蚊取り線香にも耐性が出来ているのかと思いましたが、
翌朝、その蚊は寝室とは少し離れた洗面台のところで亡くなっていました。シトロネラや除虫菊は瞬殺する力はないものの、空間に拡散された場合はじわじわと効くのかと思いました。スプレーとして吹きかければその場でポトリと落ちるくらい効くことは今までの経験で実証済みです。
でも、夜中に電気をつけて蚊をスプレーで追いかけるというのは実用的ではありません。
また、別の日、居間にある柔らかい木製の家具(捨てるつもりの家具だったので放置していました)を食い荒らしていたキクイムシが、とうとう私のお気に入りの木製のステップ台に巣食ったと見え、二日続けて床に木の粉が落ちていたのです。
このステップ台は食事の支度をするときに、高い棚のものを取るのに重宝しているお気に入りのもので、この子だけは死守せねばと思い、例のシトロネラをステップ台に出来ているキクイムシが作ったたくさんの小さな穴に滴下し、擦り込んだところ、、、
即効! 著効! 逃げるところはないですから、キクイムシは中で全滅したと見え、翌日から木屑か全く出なくなり、お気に入りのステップ台は守られました。しかも、お部屋もいい匂いです。
ぜひ、害虫駆除にみなさんもお試しを!
ただし、原液が皮膚につかないように気を付けてくださいね。
精油の『気』とは?
英国に本部を置くIFPAの初代会長である
ガブリエル・モージェイ先生の国際オンラインセミナー
『スピリットとアロマセラピー ~精油のエネルギーと東洋医学の五行説』が始まりました!
私も1回目から参加させていただいています。
モージェイ先生は私が90年代前半、ロンドンに住んでいた頃には既にアロマセラピーの専門家としてご活躍されていて、私も先生に自分のケーススタディーを採点していただき、アロマセラピストとしての道を歩み始めた経緯があります。
先生の専門は東洋医学です。 正式には中国伝統医学と呼ばれている医学のことで、近年、日本でも、セルフケアとして食養や漢方、自然療法の一つとして注目されています。アロマセラピーの中では、精油や芳香蒸留水を中国の五行陰陽説に基づいて分類してセラピーに利用します。私も先生の影響を受け、今でもJEAの精油学のテキストには、各精油について東洋医学に基づいた分類も記載しています。
たとえば、今、きれいに花を咲かせているカモミール。
JEAのテキストには『身体全体の気の流れを良くする。肝臓の熱を取る。クール&モイスト』と書いてあります。実際、ハーブ療やアロマセラピーではアトピーにカモミールがよく使われますが、アトピーの症状である皮膚の乾燥、炎症の症状にはクール&モイスト(湿&冷)の性質を持つ植物で対応することは理にかなっています。
『気』とは何か? 気はエネルギーであり、その気にも様々な種類があります。
気の中でも最も対極にあり、すべての基盤となるのは陰と陽の気です。陰は下降する、冷やす、凝縮、蓄積するような性質であり、陽は上昇する、温める、拡散する、発散するような性質です。物理学で言えば、原子を構成する粒子には、原子核の周りを飛び回っている電子(−)と原子核の中の陽子(+)があるように、この相反する性質がこの宇宙に存在するものすべてにおいて働いているのです。
JEAのテキストついては、モージェイ先生の著書である『スピリットとアロマセラピー』を参考にさせていただいているほか、今回の先生のセミナーの一回目でも紹介されていた、ピーター・ホームズ先生の1300ページに及ぶ上下巻『The Energetics of Western Herbs』も参考にさせていただいています。
面白いことに、精油に含まれる化学成分の作用と、東洋医学の視点からの作用とが一致していることがほとんどなのです。そうすると、ますます、『気』の正体を追い求め、活用したくなってくるのです
私たちの思考も『気』です。そもそも、神経伝達は電気信号で、脳波や心電図も医学では重要な指標となっています。不安になると心拍数が上がる、骨格筋が緊張するなど、心で何を感じているか、考えているかで、脳波が変わり、身体が変わるのです。
人の感情にも、動物、植物や人体などの、すべての物質にも気があるのです。気が、流れるべきところに流れ、滞ったり詰まることもなく、充分に気が満ちている状態にあれば、私たちの身体も心も健康になるように自然に出来ているのです。それが法則なのです。
JEAでは6月上旬にオーストラリア在住のヒーラーで植物療法士であるシャーロッテ・ムトロ先生に、その『気』を浄化し、良い気を身体に巡らせるメソッドについて前半後半2回のセミナーで教えていただくオンラインセミナー、『セラピスト・レディネス ~肉体・思考・感情の浄化であなたの施術が一変する~』があります。
自分自身とクライアントの今と将来をより良いものにするために、良い気を受け入れ、悪い気を手放す方法を学びます。あなたも『気』について、自然の法則について知識を深め、活用してみませんか?
『セラピスト・レディネス』 https://aromaschool.jp/course_alacarte/25093
『スピリットとアロマセラピー』 https://aromaschool.jp/course_alacarte/24995
両講座共に録画視聴での受講が可能です。
春の香り
淡き光立つ 俄雨 いとし面影の沈丁花
溢るる涙の蕾から ひとつひとつ香り始める
ユーミンの「春よ来い」です。私はこの歌が好きです。まだ見ぬ春の香り、空気感をみずみずしく感じさせてくれるすばらしい歌詞ですね。
沈丁花はまだですが、そろそろ町にも春の香りが香り始めています。
水仙、蝋梅、白梅、とてもいい匂いですね。これと、沈丁花やキンモクセイ、ジャスミンなどが自分の好きな香りです。なぜ、これらの花の香りが好きなのか、それを知りたいと思い、それらに共通する香気成分があるはず、と思って調べてみますと、リナロールは水仙、キンモクセイ、沈丁花、蝋梅、ジャスミンのすべてに、比率の多少の差はありますが、共通していました。
リナロールはアルコール類に属する物質で、強力な鎮静作用、鎮痛、抗不安、血圧降下、殺菌作用などがあり、アロマテラピーで主役級の精油に共通して含まれる成分でもあります。心を穏やかに鎮めてくれる香りで、日本の精油としてはクロモジの主成分です。
シスートランスオシメンは蝋梅や水仙に含まれる香気成分で清々しいグリーンな、まだ早春とも言えないくらいの時の気候を反映するクールな香りです。
沈丁花は春、金木犀は秋の香りですが、この二つに共通する香りがβーイオノンです。面白いのは、金木犀については、その花のオレンジ色はカロテノイドという色素成分によるもので、これが酵素で分解されてβーイオノンが生成されるそうです。ですので、金木犀においては、オレンジ色が濃いほど、このβーイオノンの量も多くなり、香りが強くなるそうです。
また、ベンジルアセテートは、白梅、水仙、ジャスミン、沈丁花に共通していました。
ところで、調べているうちに、白梅の香りは抽出が難しいため、それを他の香料を使用して再現するために調香師さんが何を使っているかという記事を見つけました。一つはジャスミン、ローズ、カーネーションとトルーバルサムを調合するというものでした。
ちなみに、この4つの香料のうち、アロマテラピー発祥の地、フランスで治療用の薬として使用されるのは水蒸気蒸留法で抽出が可能なローズの精油だけです。そのほかの精油はすべて、薬品を使って抽出する方法しかないために、人体には使用しないのがフランスのメディカルアロマテラピーの伝統です。とくに、カーネーションやトルーバルサムはフレグランスの材料としては使用しますが、アロマテラピーでは使用しません。
また、ジャスミンと安息香(ベンゾイン)を同量、混合したものが白梅の香りになるらしい、という記事も目にしました。
ジャスミンも安息香も私の好きな香りです。私の自宅サロンの名前も「安息香の木」とネーミングしたくらいです。
安息香は、わたしにとっては子供の頃の昭和な駄菓子屋さんの匂いなのです。ちょっとフェイクなバニラ様の香りで、毎日のように通った駄菓子屋さん、子供の頃の楽しい気持ちがよみがえるのです。
そして、ジャスミンはインド舞踊を26年間続けているわたしにとっては、インドの香りなのです。その二つの香りはそれぞれとても強い香りで、似た感じもあるので、この二つを合わせるということはまず、考えたことがなかったのです。その二つを同量合わせると白梅の甘く、クールな春の香りになるのか??と、にわかには信じがたいものがありました。
ですので、とにかく、二つの精油のビンを一緒に嗅いでみたら、その匂いはまさに・・・・・!!
バナナ、でした!
ジャスミンのフルーティーな香りと安息香の甘い香りが出会えば、それは当然バナナしかないのです。ジャスミンと安息香のマリアージュ=バナナ。子供が好きそうですね!
これにさらにマンダリンを加えてみました。マンダリンも子供と相性が良い香りです。なんだか、とっても楽しい気分になってきました!!
3月9日スタートの『ホリスティック・コンサルテーションとブレンディング基礎講座』は、私が30年間のアロマセラピストとしての経験と学びを通じて、質の高いアロマセラピストに必要な要素をぎゅっと凝縮させ、昨年新しく構築した特別講座です。
トリートメントを行わず、精油そのもので人の心と身体をホリスティックにサポートするために特化したアプローチを勉強します。
綿密なコンサルテーションで心と身体の状態をより深く把握し、香りと化学成分の両方の側面から、その人にピッタリのフォーミュレーションを作る方法を学ぶ8時間(二日間)の講座です。
アロマテラピーの基礎知識があれば、アロマテラピーの初級者も上級者も一歩踏み込んだブレンド作りが出来るようにます。
オンラインでコンサルテーションを行い、ブレンドをフォーミュレーションして販売することを目指している方にはイチオシです。
グラウンディングする香り
このところ、ベチバーの芳香蒸留水を洗顔後の化粧水として使っています。今日はこのベチバーの話をします。
私は英国に住んでいた1985~95年の間に自然療法に目覚め、アロマセラピーやヨガを習い始めました。その時、よく耳にしたのが、“グラウンディング”という言葉でした。精神状態が安定して冷静である、または地に足がついている、よって、大地のエネルギーによって充電ができている、というような意味あいで使われていました。
さて、精油はその揮発スピードによって、トップ、ミドル、ベースと分けられていますが、このベースノートの香り、つまり、重い、長持ちするベースノートの香りを持つ精油がいわゆる、グラウンディングの精油として使用されます。たとえば、不安感、不眠、自信欠如、パニック、考えることがやめられない、などの精神状態に対して効果があります。
そのベースノートの精油の一つに、イネ科のベチバーという精油があります。ベチバーが本来育つのはインドのような暑い地域ですが、近年、日本でもベチバーの栽培がおこなわれ、国産の精油も誕生しています。レモングラスのような外観をしていますが、使用されるのは葉ではなく、その根っこです。
個々の精油がどんなことに効果があるのかを考えたときに、その精油が植物のどの部分から採れたものなのか、どんな環境で育ったか、などを知ると、不思議に納得がいくのです。
ベチバーの根はたくさんの細い根で、深く、びっしりと土に張っています。ですから、グラウンディング、すなわち揺らがない、安定させる力を持つのです。また、根は植物にとっては生きるために必要な水やビタミン、ミネラルを土から吸収する機能があります。これは、栄養の吸収を行うということになりますから、私たちにとっては胃や腸のような栄養を吸収する臓器の機能を高めてくれるのです。仕事が忙しく、消耗してばかりいる人には心にも身体にも充電が必要です。
そして、ベチバーは暑い気候の中で育ちますので、暑さに強い、すなわち、冷やす作用があるのです。ですので、全身に使えば身体を冷やしますので暑さで身体が弱っている時や、関節炎などの炎症性の疾患に良く、また、たとえ冬であっても、頭を使い過ぎたときにはベチバーの香りをかいだり、顔や頭に芳香蒸留水などを塗布したりスプレーすればスーッと落ち着いて気が頭から降りてきます。私たち現代人は運動不足で首から上ばかり使っていますから常に気が頭に上がっている状態ですので、こんなときの頭痛にも良いとされます。アロマセラピーではベチバーは脳卒中後のリハビリ期間にも循環を良くするために使用されることがあります。
インドや東南アジアではベチバーの根でマットやすだれを作っています。とても涼しげな香りが心地よいばかりではなく、虫よけ効果もあります。特に、すだれは水をかけると香りが立ち、気化熱によって部屋が涼しくなるそうです。
昔、バリでベチバーの根で作られたランチョンマットを買ってきましが、長い間香りを楽しむことが出来ました。そのランチョンマットを使うたびにバリに旅行した時の楽しい気分がよみがえって、ああ、また行きたい!と思わせてくれました。香りは常に記憶を呼び覚まします。これがアロマセラピーのもっとも素敵な魅力です。
↑ベチバーの根で編まれたリンゴのオブジェ
気と浄化
あけましておめでとうございます。
日本人にとって元旦はとても重要な一年の節目です。
スッキリと風通しの良い心身で爽やかなスタートを切りたいですね。
日本には四季があります。自然界では、季節により、食べ物が多かったり、少なかったり、食物の種類も変わります。食べる物が豊富な春の後半から夏にかけて、動物はたくさん食べて栄養を吸収しますが、活動も活発になりますので、身体の中も健康的になります。
そして、秋が来ると、食べ物が少なくなる冬に備えて、食べられるだけ食べて皮下脂肪を蓄え、場合によってはどこかに食べ物を隠したりします。やがて冬になると食べるものが無くなるので、隠しておいた食べ物を少しずつ食べたり、冬眠したり、あまり動かずにエネルギーを温存しながら、蓄えた皮下脂肪をエネルギーとして使い、自然に体重が落ちていきます。
そして春が来て再び少しずつ食べものが増えてきます。このようなサイクルを毎年繰り返すことで、知らぬ間に動物は身体の中のお掃除もしています。皮下脂肪は非常事態に備えたエネルギーの貯蔵庫でもあると同時に、色々な毒素もため込んでいます。
今のような日本の社会では、季節に関わらず、ほとんどの人が食べたいときに食べたいだけ食べられます。
特に冬でもクリスマスだ、お正月だ、とお祝い続きでごちそうを食べ、ゴロゴロしています。寒いので運動量も減って、あまったエネルギーは脂肪として蓄積して行きます。
動物であれば、冬に体重を落とすため、脂肪に蓄えた毒も汚れも一緒に排出されていくのですが、私たち現代人はかえって冬に太ったりしていますね。
たとえば、遺伝子が人間に近い猿と比べると、人間の体脂肪率はとても高いのです。
女性で20-25%が健康的な標準値ですが、ヒト以外の霊長類では5-10%ほどしかないと言われています。
また、食べ物が少なければ、消化管や肝臓などが休み、浄化され、修復することも出来ます。
ファースティングはその意味で一定の効果がありますが、定期的に行わないと意味がありません。
日本の場合、お正月でごちそうを食べ過ぎた後、七草粥を食べて、ハーブの力も使って、内臓をいたわり、毒素の排出を促す習慣がありますが、一回食べたくらいでは、その効果は薄いと思います。
実は、私は2021年までの11年間で体重が10キロ増えてしまっていました。年齢と一緒にほぼ毎年1キロずつ、増えていった計算です。
そして2021年の5月には京都市から「このお知らせは人間ドックで肥満と診断された方にお送りしています」という通達が届いてしまいました。
血中コレステロール値も若干、正常値を上回っていました。それまでも、多少、食べる量を減らしてはいましたが、なかなか痩せることは出来ませんでした。
そこで、2021年6月から本気で減量に取り組みました。
そして10月までの5カ月で6キロ減量出来ました。しかも、健康的に痩せることが出来ました。どうやって成功させたかは紙面の関係上、ここでは述べることができませんが、いずれ、皆様にご紹介できると思います。
減量してみて良かったことは、もちろん、見た目がすっきりしたのはありますが、何よりも、「頭の回転が良くなった」「いびきをかかなくなった」「疲れなくなった」「前屈でお腹の肉がはさまらなくなった(笑)」ことです。
そして、もっとも良かったのは、身体の中の脂肪とともに、そこに溜まっていたゴミも排出できたせいか、身体の中がきれいになったと感じます。そうすると、気の通りも良くなったので、いままでよりも気を感じやすくなりました。
毎年1回、JEAで開催する日本ホリスティック医学協会の「ホリスティックヘルス塾」の講座は(2022年2月20日開催)ホリスティックな健康を目指したい方へ向けたものですが、その中でご紹介させていただく、調身、調息、調心では気を整えることが目的で、病気の予防にも気が関わっています。
身体の汚れと気の停滞が病気をもたらすのです。そこで、今年の私のテーマは「気と浄化」としました。
6月にはハーバリストでヒーラーのシャーロッテ・ムトロさんに、オンライン講座をしていただく予定です。どうぞお楽しみに!
セラピストレディネス ホリスティック・クレンジング&デトックス
〜肉体・思考・感情の浄化であなたの施術が一変する〜
【日時】6月5日、12日(日)14:00〜17:00
生物の進化と精油
地球上に命が誕生してからいままで、すべての生物は生き残るために進化を遂げてきました。
植物の世界では、たとえば、松は原始の頃からある植物の一つで、その精油にはほぼ、モノテルペン類の芳香成分しか含まれません。精油は他の生きものや病原体から身を守る目的も持っていますので、松が生まれたころは天敵も病原体も種類が少なく、精油成分の種類も少なくて済んだのでしょう。
これに対し、植物の中でも比較的新しい植物の一つであるバラの花の精油には様々な芳香成分が含まれています。
テルペン類、アルコール類、エステル類、フェノール類、などバラエティに富んでいます。バラが生まれた時代は、天敵も病原体も増えて、それだけ様々な種類の危険から自己を守る必要があったからでしょう。
私達人間はもっとも新しい動物の一つです。地球上の生命はシアノバクテリアから始まり、魚のような生き物、鳥類、哺乳類へと進化してきました。人間の受精卵が卵割を経て、胎児として育っていく過程で魚のように見えたり、指の間に水かきがあったり、しっぽがあったり、あたかも進化のプロセスを経て、生まれてくるときにはすっかり人間になっています。
ですので、私たちの身体の中にも、原始的な部分もあり、また進化した部分もあります。
呼吸などの根本的な生命現象を司る脳幹は頭のもっとも中心の深いところにあり、原始脳、つまり、ただ生きていることに必要な脳です。
次に脳幹の上を覆うように位置する脳は感情や自律神経を司る大脳辺縁系や視床下部などの古皮質、動物脳とも言われます。
そして、創造する力、高次元の思考能力などは大脳新皮質にあり、人間の脳でもっとも発達しています。このように脳の一番深いところから順に、発達してきていますので、精油も複雑で成分が多い種類のものほど、人間特有の複雑な心や身体の問題に対応できる力が大きいように感じます。
呼吸に関するトラブルには古代から生きている樹木、たとえば、松、ユーカリ、乳香などの比較的単純な成分の樹木の精油が有用であるのを見ても確かにその通りですし、バラやラベンダーなどは人間に特有の新皮質の脳が持つ、将来の不安や悩み、後悔、心の葛藤などに対して対応が可能になるのです。
心身の不調に対して、このような視点から考えて精油を選ぶこともあり、ですね。
「アロマオイル」ではありません、モンサンミッシェルの精油
フランスが元祖、メディカルアロマテラピー
フランスのメディカルアロマセラピーを紹介する講座を先日オンラインで開催しました。
14年前からJEAの授業や、ソレイユ(JEAのセラピスト派遣事業部)がセラピストを派遣している多くの医療施設で使用している精油[ブランド名:モンサンミッシェル]を提供してくださってきたのが、今回の講座の主役であるフランスの老舗精油販売会社「フロリラブ」さんです。
↑「フロリラブ」植物療法専門の薬剤師のピエール・ランベール氏
調剤薬局や医師が顧客
フロリラブは20年以上にわたり、ヨーロッパ最大級の調剤薬局を含む3,600以上の薬局と1500の医療関係者を中心に精油を提供してきました。つまり、医療用精油のプロバイダーなのです。
日本やアメリカ、英国のようにアロマセラピストが精油を療法に用いるのとは違い、医師が疾病の治療薬として精油を様々な賦形剤の形で処方するのがアロマテラピー発祥の国、フランスの今のアロマテラピーの姿なのです。
ウイルスやバクテリア、真菌類による感染症から、睡眠障害、皮膚疾患、自律神経失調、更年期障害、筋肉や関節の炎症や痛みなど、様々な疾患に精油が処方されているのです。
お茶を濁す名称「アロマオイル」
日本の一般消費者は知らない事なのですが、「アロマオイル」と呼ばれる香りのする液体は本物の精油ではない場合が多いのです。精油の定義は「芳香植物から水蒸気蒸留法で得られる100%天然の揮発性有機化合物」ですから、安価な合成物質だけで出来ていたり、それらを精油に混ぜたものを販売している会社は、「精油」と言うと嘘になってしまうため、あえてアロマオイルという新しい呼び名で呼んでいる場合もあると考えられます。
念のために書いておきますが、精油は「油脂類」ではありません。精油には油脂成分は全く含まれません。
(圧搾法で抽出されたミカン科の植物の精油も本来は精油ではなく、エキストラクトに分類されます。)
人間が合成した香料は3000種類
昔、ヨーロッパでは香水はすべて植物から蒸留した精油とアルコールで出来ていましたが、現在では、香水のほとんどは植物由来ではなく、ベンゼンやアセチレンなどから化学的に合成された香料とアルコールを組み合わせて作っています。
芳香植物は香りが良いだけではなく、薬用植物としての働きを持つものが多いのです。
たとえば、仏像、お線香や扇子などの材料として日本で昔から使用されていたサンダルウッド(白檀)は、乳香や没薬など宗教儀式に使用される芳香植物の多くがそうであるように、精神安定作用がありますが、一方で、殺菌作用や消炎作用などもあリ、アロマセラピーでも人気の精油です。
しかし、栽培が需要に追い付かず、サンダルウッドは今や非常に高価な精油となってしまいました。
そのため、香料業界では、もうずっと前から本物の精油ではなく、化学的に合成された白檀らしい香りの香料を作り、使用しています。その中身は企業秘密です。もちろん、それは薬としては使えません。
香りのシンフォニー
今回、フロリラブが誇るラベンダーの精油について、その栽培から蒸留に至るまでのこだわりについて説明がありました。
JEAの授業で使用しているラベンダーを嗅いでみていただくとわかるのですが、香りが豊かで奥深く、まるで香りのシンフォニーです。安いラベンダー精油のような奥行きのないキツさもありません。その香りの奥深さはいったいどこから来るのでしょうか?
環境を選ぶ
フロリラブは自然が豊かで、大気汚染や農薬汚染がなく、かつ、標高1000メートル以上の高地でラベンダーを栽培する農場から長年精油を買いつけています。(良いラベンダーの精油は標高が低いところでは作れません。)
種から育てるのには理由があります
北海道などで見かけるような、青一色の整然として花の高さがそろった畝のラベンダー畑のラベンダーは、実は挿し木で増やしたクローンです。つまり、桜で言えばソメイヨシノです。一つ一つの株の色も形も匂いも全く同じなのです。それが香りを単調なものにしています。
↑挿し木で育てたクローンラベンダー
↑種から育てたラベンダー
フロリラブが契約している農場では「挿し木「ではなく、「種」からラベンダーを育てています。写真で比べてみるとわかりますが、種から育てたラベンダーは色のバリエーションがたくさんあります。これは何を意味するのでしょうか?
実は、精油に含まれる芳香成分がバラエティに富んでいるということなのです。これはまさに香りのシンフォニーなのです。奥行きのある、まろやかな香りがそれを物語っています。
大量生産ラベンダーとの違い
大きな農場のクローンのラベンダーは姿かたちが整っているので、トラクターで一気に収穫できるため、大量に精油が採れ、低コストです。これらの精油のバイヤーは複雑な香りや芳香成分の薬理効果にはこだわらず、出来るだけ安い精油を買い付け、化粧品会社などにせっけんや化粧品の香料として大量に卸しています。
これに対し、薬用の精油を扱うフロリラブが購入するラベンダー精油は全く違うアプローチで作られています。
種から育てたラベンダーは花の高さがまちまち。本来それが自然な状態なのです。ですから、手作業でしか収穫できません。収穫したものは束にして一日置き、水分を飛ばして香りを濃縮させます。
湧き水を使って丁寧に蒸留する
そのあと、変質を避けるためにすぐに農場の蒸留器で蒸留するのです。
蒸留に使用するのは清らかな湧き水です。
蒸留にはゆっくりと時間をかけ、出来るだけ多くの芳香成分が残るように行います。また、蒸留した後に残った植物の残渣は、次の蒸留のための燃料として使用するため、無駄がなく、とてもエコです。
手間暇かけて、心をかけて生まれた精油
フロリラブでは常に新鮮な精油を販売することにこだわっているため、大量に仕入れて在庫にすることはせず、信頼関係で結ばれた、薬用としての品質にこだわる顧客に販売するために必要な量しか買い付けません。
これほどまでに手をかけて大切に育て、丁寧に採取され、蒸留された精油を使わせていただける私たちは本当に恵まれているのです。
あらためて、これからも、モンサンミッシェルのラベンダーを大事に使わせていただきたいと思います。
サー・キース・ハントによる講座が来年1月開催予定
ロイヤル・フリー病院はロンドンの閑静なハムステッド地区にあるヨーロッパ有数の総合病院です。
1828年、外科医として働き始めたばかりのウィリアム・マーズデン医師は、貧しい人々が医療を受けられない現実に驚き、貧しい人が無料で治療を受けられる病院が必要であると考え、皇室の援助を受けてこの病院が設立されました。19世紀にヨーロッパでコレラが猛威を振るった際に唯一、閉鎖せずに治療を続けた病院としても有名です。常に真に患者に寄り添う病院だからこそ、アロマトリートメントがここまでしっかりと定着したのです。
このロイヤル・フリー病院で1992年にアロマトリートメントを始め、その後、2019年に定年退職するまで補完療法チームのリーダーとしてマッサージを続けたセラピストがサー・キース・ハントです。
彼は、もともとリクリエーション・マネージャーとして十代で病院に就職しましたが、イベント開催中のある事件をきっかけに、「触れること」の重要性に目覚め、病院でのマッサージの草分けである英国人のクレア・マクスウェル・ハドソン氏に師事し、マッサージを学びました。始めは慣れないマッサージの勉強に挫折しそうになりながらも、周りの人々に支えられて無事、資格を取得しました。
彼は最初、仕事の傍ら、医療スタッフのストレスケアとして医師や看護師にボランティアでマッサージを行っていましたが、その効果を実感した医師たちが、患者への施術を依頼するようになり、その成果が認められて、2001年、病院のマッサージセラピストとして正式に雇用されました。
そして、年々、施術件数が飛躍的に伸び、これまでに何十万人もの患者とその家族に癒しの時間が提供されました。その素晴らしい功績に対し、2013年には王室からサー(MBE)の称号が与えられました。
補完療法チームのメンバーも次第に増え、2017/18にはセラピストは24名となり、年間の施術件数がなんと34,780回に登りました。
ロイヤル・フリーでは、医師の指示書があればどのような病気の患者でも無料でアロマトリートメントが受けられます。化学療法、放射線療法、透析、臓器移植などを受けている患者も例外ではありません。年齢も5歳から101歳まで幅広く、すべての病棟の患者が対象です。オンコロジーマッサージ(がん患者へのマッサージ)はもちろん、様々な難病や進行性の病気、遺伝性の病気の患者にも施術を行います。
エボラ出血熱に感染した看護師にもチームのメンバーが防護服を着用してマッサージを提供しました。
キース先生は2019年に定年を迎えて退職しましたが、その後もボランティアとして週に一回、病院で施術を行っています。
昔も今も、キース先生は病棟内を歩く時も笑顔を絶やさず、どんな相手にも気さくでフレンドリーに対する病院の人気者です。キース先生が常にセラピストに心がけてほしいと説いているのが「アイコンタクト」。心を通わせるためにもっとも重要なコミュニケーションです。
キース先生は輝く光を放つ天使のような方ですが、医療現場での施術に関わる数多くのルールや責任、施術記録管理、様々な病気で苦しむ多様な文化背景を持つ人々へのパーソナルな対応、個性と考え方が多様なセラピストチームを一つにまとめて信頼されるチームを維持すること、また、寄付で支えられているセラピストスタッフの人件費を工面する寄付金集めの活動、などなど、非常に現実的な面も持ち合わせたバランスの取れたセラピストです。だからこそ、実現できた施術件数と功績なのです。世界中のどこを探しても、これだけのマッサージ施術症例を果たしたチームは他にありません。1996年からそのキース先生の働くロイヤル・フリー病院での見学や研修ツアーを開催してきたのがJEA校長のギルです。
2022年1月、JEAのために、キース先生が再び、ロイヤル・フリーで培った叡智を伝えてくれます。
コロナウィルスの状況が許せば来日し、技術研修をしていただきます。もし、来日が難しい状況でも、オンライン講座(Zoom)で現場での症例とアプローチについて講義をしていただく予定です。ぜひ、この素晴らしい機会を見逃されませんように!
その精油、セラピューティックグレード?
アロマテラピーと言う言葉はフランスのR.M.ガットフォセが1928年に作りだされた言葉ですが、直訳すると日本語では芳香療法となります。しかし、実際のところは、フランスでは歴史的にも『香りで癒す』、というより、芳香植物を薬として用いた殺菌消毒、強壮、治癒促進、消炎、鎮静などを目的とする治療法がアロマテラピーだったのです。ガットフォセが行った治療法もこのようなものでした。
その流れをくんで、今でもフランスでは精油は薬の材料として使われています。ここが日本と違うところです。
たとえば、日本で言えば、医師免許を持った漢方医がいるように、フランスでも植物療法の知識を持つ医師がいます。
西洋の合成薬よりは自然の薬を使いたいという患者さんがそのようなドクターにかかります。
植物療法ドクターは通常の診察通りに患者の診察をして、精油を使用した処方箋を書き、患者はそれを調剤薬局に持っていって処方をしてもらう、というのがフランスでの本来のアロマテラピーです。
日本でも90年代後半からアロマテラピーが知られるようになり、今ではその言葉を知らない若い女性はいないでしょう。しかし、その主役である精油が何なのか、わかっている人はごくわずかです。
精油は目で見てそれが何かとわかるようなものではありません。
形を持つ野菜やハーブと違って、パッと見、遮光ビンの中に入っている『香りの強い液体』ですので、しろうとにはそれが100%正真正銘の精油なのか、それとも混ぜ物が入っているのかを判断することが出来ません。完全に合成されたアロマオイルを天然の精油だと勘違いしている方もたくさんいます。
近年、香害といって、合成香料の香りで健康被害が出ているくらいですので、これを精油と信じ込んで肌につけたり、フランスの真似をして素人判断で飲んだりすることは非常にリスクが高い行為であることはもっと広く知られるべき情報です。
一般の方は全くご存じないと思いますが、このような治療用の精油と、一般消費者向けに販売されている精油、食品産業や化粧品産業での工業用香料として流通している精油とは流通ルートも流通量も価格も違います。また、精油そのものの品質も違います。医療用として処方に使用される精油は必ず、ロットごとに成分分析が行われ、その構成成分、有効成分や毒性成分の含有量、混ぜ物がされていないかも調べます。精油は内服薬や坐薬として身体の中に入りますので、それは当たり前のことと言えば当たり前ですね。
そのような厳しいチェックを受けて実際に調剤薬局で処方に使用されている精油であれば、セラピューティックグレードとかメディカルグレードと呼んでも差支えないと思いますが、世間ではそうではない精油をもセラピューティックグレードとして売っている場合があります。
精油の販売会社と利益相反になりそうなつながりのある民間の法人がお墨付きを与え、勝手にセラピューティックグレードと謳い、医師の免許もない、アロマセラピーの専門的知識も精油成分の毒性についても学んでもいない人々が、他の精油より効果が高いとか、飲むことや原液で皮膚につけることも安全です、なぜならセラピューティックグレードだから、と言って(おそらくご本人もそう思い込んでいる)販売している困った現象がこの何年かの間に、日本でも広まってしまいました。
これが、医療従事者の間でもそうなっていることを私は非常に危惧しています。
情報の真偽を見分ける力が低いと、そのようなことになってしまいます。このブログを読んでくださった皆様だけでも、ぜひ、ここは気を付けていただきたいと思います。
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