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  • イギリス

    日本におけるアロマテラピーの役割

    芳香療法という日本語にはなじみがなくても、アロマテラピーという言葉は日常生活でよく耳にするという人は多いでしょう。それほどアロマテラピーは日本人の意識に浸透しているにもかかわらず、具体的な内容についてはあまり知られていません。アロマテラピーとは香りを意味するアロマと、療法という意味のテラピーを合わせた言葉で、20世紀始めのフランスで研究が始まりました。日本には1980年代に導入され、心身のリフレッシュなどのために精油とも呼ばれるエッセンシャルオイルを利用するようになりました。
エッセンシャルオイルは、植物の花や葉、種、樹皮などから抽出し有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質ですが、その豊かな香りはさまざまなシーンで使われています。ディフューザーで香りを楽しんだり、入浴剤の代わりにバスタブに入れてリラックスしたりするほか、化粧水などを自作することもできます。しかしエッセンシャルオイルは取り扱い方法を間違えると逆効果となることもあり、十分な正しい知識が必要です。一般的な知識はネットや書籍から得ることができますが、正しく安全に使用できるようになる知識を学びたいという場合はスクールに通い、資格を取得するという方法もあります。
ヨーロッパでは代替医療として発展したアロマテラピーですが、日本に伝わったのは芳香浴などを中心としたものでした。そのため以前は趣味として楽しむものという考え方が中心でしたが、最近になって資格を取得して仕事に役立てるという人が増えてきました。中でも英国IFPA協会認定の資格は世界で通用する国際資格として認められており、英国IFPA協会の認定校は日本国内には数校しかありません。一方AEAJ資格は日本で唯一の公益社団法人の資格で、アロマについて学んでみたいという人からプロとして働きたいという人まで取得することができます。

    英国IFPA資格とAEAJ資格

    将来アロマセラピストとしてサロンを開業したい、アロマについて教える講師として活動したいなどの希望がある場合、アロマに関する資格を取得しておくと有利です。さまざまな資格がありますが、世界最高水準の技術と知識を身に付けたいなら、英国IFPA協会認定のメディカルアロマセラピスト資格がおすすめです。IFPAの認定校では、IFPAが認定したトレーニングコースを受講することができます。イギリスの大学で認定証が発行される唯一の資格として、将来は医療や福祉、スポーツなど幅広い分野に活躍の場を求めることができます。そのため資格の取得には、エッセンシャルオイルに関する知識のほか、解剖学や病理学の専門的な知識、トリートメントの技術などの習得も必要とされています。
日本のAEAJ資格は、アロマテラピーの専門家を育成するために独自で制定された認定資格です。全国各地にAEAJの定める条件を満たした認定スクールがあり、自分のレベルに合った検定や資格を取得するために学ぶことができます。例えば基礎的な知識を得ることでアロマを生活に取り入れたい人や、専門知識を身に付けインストラクターとして活動をしたい人など、さまざまなニーズに対応した資格が用意されています。実際にセラピストとしてアロマテラピートリートメントなどを実践できる資格は、技術はもちろん精油の作用などに関する知識も求められるため、認定スクールでの学習が重要です。
英国IFPA資格は、世界水準のメディカルアロマセラピストの証明ともいえる資格なので、認定スクールで学ぶ時間も長めになります。また払う費用も他の資格より高くなる傾向があります。しかし英国IFPA資格の対応コースを受講することのメリットは、同時にAEAJ資格などの取得を目指すこともできるということです。両方の資格取得を考えている場合は、事前に認定スクールに確認を取ってから受講するようにすれば安心です。

    アロマテラピーを楽しむために

    自宅でアロマテラピーを簡単に楽しむ方法の一つとして、芳香浴があります。エッセンシャルオイルは揮発性が高いため、アロマポットなどを使うと蒸気とともに部屋中に香りが漂います。アロマポットは、ロウソクを使うもののほかコンセントに差し込んで電気で温めるタイプのものや、ミスト化したオイルを拡散するディフューザーなどがあります。資格を持っていると、部屋や環境に適したアロマポットを選んだり、気分や体調に合わせたオイルを選んだりブレンドする知識を得たりすることも可能です。つまり英国IFPA資格やAEAJ資格を持っていると、サロンや医療の現場などで役立てることができるだけでなく、家庭の中で、家族の健康や体調管理、あるいは空間演出などで癒やしの住環境をつくることもできるということです。
アロマテラピーは、医療現場などでも使われるように専門の知識が必要とされます。資格取得のためにスクールなどで学んだ経験がない場合は、アロマを楽しむ際にいくつかの気を付けるポイントがあります。例えば近年日本でも流行しているベビーマッサージですが、エッセンシャルオイルは直接肌に付けるのは刺激が強すぎるためベースオイルなどで薄めて使用します。また赤ちゃんによっては、敏感肌やアレルギー体質の場合もあるので濃度に気を付けなければなりません。
サロンの開業や福祉の現場で働くことを考えている場合はもちろん、アロマショップなどでの就職を希望する場合も資格があるというだけで信頼度は増します。アロマの資格を職業として利用しなくても、家族の健康管理などにも役立てることも可能です。そしてなによりアロマの知識があるだけで、安全にアロマテラピーを楽しむことができるというメリットもあります。

  • アロマの歴史

    エステサロンやクリニックで使われる「アロマ」を、単なる香りのことだと思っている人は多いでしょう。リラックスする香りで心地よい空間を演出するための小道具といったイメージかもしれません。しかし、この世界はもっと奥深く、さまざまな歴史と概念に彩られています。歴史と概念を学ぶと、もっと詳しく知りたい、あるいは体験してみたいという気持ちが湧き起こってきます。精油を使った療法は、ヨーロッパやアラビアで古くから行われ、起源は古代エジプトともいわれています。現在日本で普及しているものは、イギリスとフランスのメソッドをルーツとし、医療現場でも導入される事例が増えているものの、一般的なイメージであるリラクゼーションとして広く活用されています。
    古代エジプトでは、香りは神にささげる神聖なもので、かぐわしい煙(香煙)とともに魂が天国に導かれることを願い、神殿で焚かれました。香料や香水を表す「perfume」という言葉は、ラテン語の「per(通して)」と「fume(煙)」に由来し、「煙を通して」という意味があります。また、聖書には、イエスの誕生を祝って東方の三博士が精油である没薬と乳香を持参したという記述があります。古代エジプトではミイラを作るために用いられるなど、精油の歴史は人類の文明とともにありました。薫香や浸剤の文化もあった古代エジプトは、最古のアロマセラピーを実践していたといえます。エジプトの香料文化は、古代ギリシャやローマにも影響を与え、香油あるいは練香などの香料を調合し、精製する技術を推進しました。古代ギリシャやローマにおける香料の発展は、書物にも著されています。また、古代インドの聖典では、伝統医学のアーユルヴェーダにおける薬草療法が詳述されています。これにより、薬用油を使った施術、いわゆるオイルマッサージが、既に古代インドで行われていたとわかります。哲学や医学が誕生した古代ギリシャでは、植物やその香りが治療や燻蒸のために使われ、医学者ヒポクラテスにより現代に通ずる医学の基礎が築かれました。その考えは『ヒポクラテス全集』よりうかがい知ることができ、治療薬には芳香植物が含まれ、芳香植物を生のまま、もしくは乾燥させたものを焚いて燻蒸することが治療のひとつとして用いられました。アレキサンダー大王の東方遠征後にハーブやスパイスの貿易が始まるなど、アロマの歴史を紐解いていくと、世界各国の古代文明を遡って学ぶことになります。

    アロマの伝播と変遷

    中世ヨーロッパに伝わったアラビア錬金術は、効率の良い蒸留の技術をもたらしました。ルネサンス期には、蒸留術に関する書物がたくさん著されています。最先端の蒸留術で製造された精油は、病気の治療や予防に用いられ、14世紀のヨーロッパで猛威をふるったペストにも効果を発揮しています。ローズマリーやラベンダーなどのハーブを漬け込んで作ったビネガーの殺菌力が、ペストの感染を防いだというエピソードや、バラの花の精油を使った薬をペスト患者に与えたという逸話があります。ローズマリー水やラベンダー水は、医療活用されると同時に香水のもととなり、嗜好品としても発展していきました。1930年代、フランスの調香師ガットフォセが著書を発刊し、精油やエッセンスの医療的利用を提唱します。実験中に自身が負ったやけどをラベンダーの精油で治療した経験が、執筆のきっかけになったとされています。ガットフォセの造語による著書名が、アロマを世に広めました。彼のプロパガンダは、第二次世界大戦やインドシナ戦争などで応用されています。この理念はフランス式アロマテラピーの礎となり、やがてイギリスに伝わることとなります。イギリスの化学者マルグリット・モーリーは、フランスの研究者たちの理念を学ぶと、精油を植物油で希釈し、トリートメントに用いました。リラクゼーション法を代表とする、美容療法の始まりです。彼女の美容療法は、体全体のバランスを整えるホリスティックアロマテラピーの一つとして、イギリス式アロマテラピーを生み出すこととなります。

    アロマを現代の仕事に取り入れる

    イギリスでは、古来ハーブの栽培が盛んに行われ、体調への効能も知られていたため、近世フランスのアロマテラピーが自然に定着しました。現在のアロマ療法は、フランス式とイギリス式に大きく分けられます。精油の民間療法の流れを汲むフランス式は、医療代替行為として、国により認められています。資格を有する医者や薬剤師でなければ、精油を調合したり、患者に処方したりすることはできません。一方、イギリスではフランス式の内服中心、薬理作用重視のアロマテラピーとは対照的に、精神と肉体的なアンバランスを正常化するという方法論を提唱し、のちのホリスティック・アロマテラピーとして浸透していきました。日本の場合はイギリス式の影響が大きく、おもにエステサロンやマッサージ施設で用いられています。とはいえ、日本ならではのフレキシブルな導入スタイルは、フランス式の要素も含み、リラクゼーションとメディカルを合わせた活動が盛んです。アロマの知識と技術を学ぶ現場からは、サロンを開業したり、ホテルスパのセラピストとして活躍する人を輩出しています。医療や福祉の仕事に取り入れ、セラピスト派遣活動に従事する人、空間演出の仕事に取り入れ、香りをデザインする人など、活用方法はそれぞれ多彩かつ当世風です。昨今各地にスクールが展開され、経験豊富な講師や専門性の高いセラピストに師事して、メディカルとリラクゼーションをじっくり学ぶことも可能となっています。

  • 香り高いアロマを自分でクラフト

    さまざまな香りで気持ちを落ち着かせたり、前向きな気分にさせてくれるアロマは、昔から馴染みのあるお香と同じようなものです。スタンダードな方法で家の中で使うだけではなく、心も体も落ち着かせるマッサージ店や、ゆったりとした時間が流れる雑貨屋さんなどでも使われています。現在では海外からの輸入品も多く出回っていて、馴染みのラベンダーやローズなどの花々に甘い香りが特徴的なバニラ、爽やかな香りがするレモングラスなどのハーブが混ざり合った複雑な香りのものもあります。人間には視覚、聴覚、味覚、触覚、そして嗅覚の五感が備わっています。人間の嗅覚は数多くの生命体の中でかなり発達していて、とても鋭い感覚のひとつです。最後まで記憶に残る感覚も、この嗅覚といわれています。香りは人間にとってとても覚えやすく、わずかな香りの差でも識別してしまうほど高い感度を持ち合わせています。例えば家のカレーライスと学校の給食や職場の社食のカレーライスだと、カレールーの味や香りのわずかな差にも気付くものです。これは味覚もありますが、嗅覚も同じくらい関係しています。アロマクラフトで使用する精油は植物の有効成分を抽出しています。身近にある植物の香りは古代から人々の役に立てられていて、ヨーロッパ諸国ではアロマを使ったリラクゼーションを医療的な行為として認めている場所もあります。植物由来の化粧品やクラフト製品はたくさんの種類が出回り、選びやすい時代になりました。しかし市販のものだと、香りが強すぎたり弱すぎたり、また純粋な香りを楽しみづらかったりすることもあります。そんな場合は自分で精油を使って生活に使う美容ジェルやクリームなどを創作してみてはいかがでしょうか。

    一から好みのアロマをクラフト

    何事も一から作り出していくことは大変で難しいことです。アロマクラフトも同じく、何も知らないままでは作り出すことは不可能です。まずは香りの勉強をすることが最重要になります。今ではクラフト専用のコースも充実していて、興味を持てば簡単に学べるようになってきています。香りの勉強というと一見難しいことのように感じられますが、もともと人間には鋭く感度が高い嗅覚が備わっています。そのため体感しながら学べるものとして、親しみやすく楽しめる勉強のひとつです。たとえ覚えるのが苦手という人も、年齢的に難しいと思っている人でも十分自信を持って学ぶことができます。香りにはリラクゼーション効果があるほか、さらに記憶力を向上させる働きも持ち合わせています。もし勉強に自信がない場合でも、そうした効果を活用することが可能です。それぞれの精油に含まれる成分とその作用について学んだうえで、目的とする効能や好みの香りをブレンドして、キャンドルやバスボム、リップバームやハンドクリームなど様々なものをクラフトして楽しめます。香りの作用や精油の成分について学ぶことで、毎日の体調管理や風邪をひきやすい季節の変わり目などに役立つほか、モヤモヤした気分をリフレッシュさせる効果も期待できます。また学びながらすぐに活用できることから、実用的で暮らしのエッセンスとして毎日の生活に役に立ちやすいです。中には香りを学んでいく上で、イライラや憂鬱な気分が改善されて、ゆとりある癒しの暮らしに変わったという人ももいます。

    アロマクラフトはいいポイントだらけ

    一からアロマを学ぶことで、自分だけでなく周りの人へもいい影響を与えます。例えば前よりも居心地の良いリラックスできる空間を作ることができたり、香りの効果で免疫力が向上したり、ダイエット効果に繋がるなどです。無機質な部屋であったとしても、その部屋自体の香りが変わることでリフレッシュでき、さらに和みやすくなります。プレゼントにもぴったりなので、相手をイメージして香りを創作したり、贈る相手の好きな香りを知っておくと喜ばれます。ポピュラーなラベンダーの香りは安眠効果が期待でき、心身をリラックスさせて心地よい眠りを与えてくれます。例えば就寝前に枕元へクラフトしたアロマキャンドルやポプリなどを置いておくと、簡単に取り入れることができます。一方オレンジなどの柑橘系の香りは満腹中枢によく届くので、ダイエット効果に繋がります。食欲は脳の視床下部に存在する満腹中枢と接触中枢によりコントロールをされており、視床下部は交感神経と副交感神経の機能を総合的に調節しているので、この自立神経に作用する働きをもつ精油を使用することで食欲に対する苛立ちを抑え、それに付随して食欲も抑える効果が得られます。このように趣味の一環としても十分に楽しむことができ、また生活の質を向上させるほか、社会人としての教養にも役に立つものがアロマクラフトです。リラックス効果もあるので、ストレスを軽減させてくれます。さらに学ぶ人の年齢層も幅広く、気軽に始められることも魅力的なポイントのひとつです。

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    リンパドレナージとは

    はじめに、「リンパドレナージ」の「ドレナージ」について。
    英語で、排水の意味を示す「ドレナージ」ですが、医療では体内に溜まった血液や滲出液などを体外に排泄することを指します。美容を目的としているところでは「ドレナージュ」(フランス読み)と表現していることが多いため、一般的には「ドレナージュ」の方が聞き馴染みがあると感じられる方も多いと思います。しかし、MLDトレーニングセンターで学ぶ手技は、美容のみを目的としない、医療分野でも導入が進んでいる技術となりますので「ドレナージ」と言います。
    次に、「リンパドレナージ」の「リンパ」について。
    身体の中には、動脈と静脈のほかに「リンパ管」と呼ばれる管があり、リンパ管は全身の皮膚のすぐ下に網目状に張り巡らされていて、このリンパ管の中には「リンパ液」という液体が流れています。リンパ液は、タンパクや白血球などを運びます。また、腋窩(えきか:わきの下)や、首の付け根、そけい(脚の付け根)などには、リンパ節という豆のような形をした組織があり、感染やがんが全身へ広がることを抑える役割を持っています。がんの治療において、手術でリンパ節を取り除いたり、放射線治療によってリンパの流れが停滞することで、生涯にわたり腕や脚が浮腫むことがあります。このむくみをリンパ浮腫といいます。

    リンパ浮腫とその治療

    日本では、年間、約1万人がリンパ浮腫を発症しています。発症率は乳がん術後で10%、子宮がん術後で25%と言われています。リンパ浮腫患者の90%は女性と言われています。日本人の乳癌罹患率は14人に1人と言われていますので、そのうち10%がリンパ浮腫を発症するのであれば、日本人女性の140人に1人が上肢のリンパ浮腫を発症することになります。
    子宮がん発症率は74人に1人と言われていますので、そのうち25%がリンパ浮腫を発症するのであれば、日本人女性の296人に1人は下肢のリンパ浮腫を発症する計算になります。
    この二つを合わせると、ざっくり140人に1.5人ほどの日本人女性がリンパ浮腫を発症する計算になります。
    リンパ浮腫は一度発症したら、一生付き合わなければならないものです。
    治療法として患者が受けることができるものとして、現在はリンパ管静脈吻合手術、リンパ管やリンパ節の移植手術などの外科手術、保存療法(CDT:複合的療法※)、どちらの治療法を選択したとしても、100%もとに戻ることはありません。再生医療の試みも始まっているので、将来的には治るかもしれませんが、今はまだ、完全に治癒することはできません。
    ですから上手に浮腫みとお付き合いしていかねばなりません。しかし、早めの治療開始や管理で、ほぼ、正常の状態を維持することはできます。大事なのはできるだけ進行していない時から、すべきことを知り、行動することです。
    リンパ浮腫治療を行っている医療機関で経過を観察しながら、少なくとも、圧迫療法は一生続けなければなりません。時々さぼるのは大丈夫ですが、完全にやめてしまうと悪化します。
    町のアロマサロンやマッサージサロン、整骨院などで受ける普通のマッサージは、正しいアプローチで行えば、心の癒し、健康増進としての価値もあり、軽度のリンパ浮腫であれば一時的に少し改善することもあります。ただし、それらをもってしてリンパ浮腫治療の代わりにはならないことを肝に銘じておかねばなりません。エステサロンなどで行うリンパドレナージュ、リンパマッサージ、スリミング目的のバンデージング、強いマッサージはリンパ管やリンパ節が正常に機能していて、血液の循環障害がない場合のみ行っても安全ですが、リンパ浮腫治療としては決して行わないでください。

    ※リンパ浮腫の標準的治療『複合的療法CDT(Complex Decongestive Therapy)』とMLD

    CDT、複合的療法とは、様々な理学的療法を組み合わせ、患者自身のセルフケアとともにリンパ浮腫をコントロールするアプローチの治療法です。この中で用いられるMLD、すなわち、マニュアル(用手的)リンパドレナージ(リンパ排液)の開発者はデンマーク人のエミール・ボッダー博士です。
    1932年、エミール・ボッダー(Emil Vodder)博士が世界で初めて、Manual Lymph Drainageを開発しました。
    1960年代に入り、ドイツ人の医師、フェルディ(Foldi)、アズドンク(Asdonk)、オーストラリア人の医師、キャスリースミス(Casley-Smith) がボッダー式MLDの研究を始めました。
    1967年にはアズドンクが2万人の患者を対象としたボッダー式MLDの臨床研究(ドイツ)を行い、ボッダー式MLDの作用、臨床での適用、禁忌を発表しました。その後、ドイツでMLDが保険適応となりました。1974年、ボッダー博士の直弟子であるギュンター・ウィットリンガーによって、オーストリアに世界初のリンパ浮腫クリニック Lymphedema Therapy Centerが正式に設立されました。

    リンパ浮腫患者が避けるべきこと

    リンパ浮腫患者が避けるべき行動の中にはろ過を増やす行為、すなわち、浮腫みを悪化させる行為があります。たとえば、「患部を熱する」「患部を弾性着衣や弾性包帯などで圧迫せずに激しい運動をする」「患部をむやみに強くマッサージする。」など。

    リンパ管には交感神経の働きによる自律収縮能力があり、安静時、1分間に数回の収縮をしているが、必要に応じ、少なくともその20倍の収縮スピードでリンパを輸送できることが確認されています。そのため、間質圧は少し上がっただけでリンパ流量は20倍に達し、それ以上、圧が上がっても、リンパ流量はそれ以上増加することはありません。すなわち、2mmHgを越えてどれほどマッサージの圧を強めても、リンパ流量はそれ以上増えることはなく、逆に、圧を加えれば加えるほど、血管内の静水圧を高める結果となり、毛細血管からのろ過だけが増加し、浮腫みを悪化させていくことになります。強いマッサージはリンパ管の輸送スピードも高めますが、同時にろ過も促進してしまいます。リンパ浮腫の起きている部位を風呂の浴槽にたとえるなら、強い圧でマッサージすることは浴槽の栓を抜くと同時に、水道の蛇口を全開にして浴槽に水を注ぎ続けることに等しく、合理的ではありません。

    ボッダー式は水分が主となるやわらかい浮腫では非常に弱い圧で施術を行います。よって、ろ過量を増やさず、リンパ管の輸送スピードだけを20倍にするために効果が高くなります。ただし、線維化を起こして硬くなっている部位には硬化した皮膚を柔らかくする手技や、強い圧の手技も行います。

    リンパ浮腫の治療法

    リンパ浮腫の治療法『複合的治療CDT(保存療法)』は、①MLD(リンパドレナージ:用手的療法)と②圧迫療法で構成されています。

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    ①MLD(リンパドレナージ:用手的療法)は、日本では2016年から保険収載されました。

    患肢に溜まった水分を排液領域の正常に機能しているリンパ管がある隣接する領域へと誘導していく手技療法です。何十年も前からCDTというリンパ浮腫治療法が行われていたヨーロッパなどでは、ボッダー式から派生した、フェルディ、アズドンク、レ・デュック、キャスリースミスなどもMLDメソッドとして医療機関で採用されてきました。

    日本ではMLDを含むCDTが医療として使用されるようになってから十数年と日が浅く、これらのメソッドを教える資格を持っている認定講師も少なく、必ずしも正しい方法が学べるわけではなく、リンパ浮腫療法を行う医療従事者の技術や知識レベルには現在かなりのばらつきがあります。また、セルフケアとして患者自身が行うリンパドレナージ(SLD)もありますが、浮腫軽減の効果があるというエビデンスがないため、近年ではあまり推奨されなくなっています。

    圧迫療法

    ②圧迫療法は、国保による弾性着衣や包帯の購入代金の補助制度があり、リンパ浮腫治療には必要不可欠の療法で「多層包帯法」と「弾性着衣」があります。

    症状が進行して、太く、固くなってしまった腕や脚を細くするためには、禁忌となる別の疾患がないことを確認したうえで、圧迫療法としては弾性包帯による圧迫を行います。この段階では、日ごとに患肢の周径が減少するため、患肢の太さが変化しても常に最適の圧迫をかけることのできる「多層包帯法」で圧迫を行わなければなりません。この段階で弾性着衣を用いてしまうと治療は成功しません。

    また、軽度のリンパ浮腫や、集中排液の治療が終わった患者においては、包帯ではなく「弾性着衣」が用いられることが多いです。しかし、弾性着衣も、その材質やサイズの選び方、セラピストによる患肢の計測が間違っていると、圧迫療法の効果が得られないだけではなく、最悪のケースではリンパ浮腫が悪化することもあります。

    リンパ浮腫とそれ以外の浮腫のマッサージ方法

    リンパ浮腫とそれ以外の浮腫はマッサージの方法も圧も違います。
    リンパ浮腫患者へのマッサージを行う際、機能していない所属リンパ節の排液領域においては、そのリンパ節に向けてリンパを流してはいけません。リンパ管内のリンパや間質の間質液は正常に機能しているリンパ節の方へ迂回させます。エステなどで用いる圧の強い、リンパ節に向けて誘導していくマッサージはリンパ浮腫を悪化させます。たとえ医療従事者であっても、リンパ浮腫に対する正しい知識と技術をお持ちとは限りません。専門知識のない医療従事者がリンパ浮腫患者の患肢にむやみに強いマッサージを行ったり、包帯法を試みるのは、リンパ浮腫を進行させてしまったり、線維化を助長して状態を悪化させる危険性があります。

    ボッダー式リンパドレナージでは、リンパ浮腫に対する手技や手順と、それ以外の浮腫に対する手技や手順は異なります。ボッダー式では、高拍出性浮腫(リンパ系が正常に機能している浮腫)に対しては、非常に軽い圧で行います。それにより、発痛物質がリンパ管に吸収され、疼痛緩和と炎症の鎮静に働きます。また、細静脈から間質にろ過したアルブミンは、間質に浮遊する老廃物を吸着し、それをリンパ管に吸収させることで組織の浄化を行います。リンパ浮腫患者に対しても、患側以外の正常に機能している排液領域部分には基本的にこのソフトアプローチを用います。

    一方で、リンパ浮腫の場合、まず先に正常に機能している患肢の所属リンパ節排液領域に隣接する排液領域のリンパの流れを促進する手技を行います。次に、体幹の部分において、患側から健側へ、間質液を誘導しつつ、郭清したリンパ節の場所によって、たとえば乳房の場合は両腋窩リンパ節間吻合、もしくは腋窩鼠径リンパ節間吻合を使って間質液の吸収とリンパの輸送を促進する特殊な手技を使用して正常な排液領域に向かってリンパを誘導します。患側の所属リンパ節に最も近い部位に線維化があれば、線維化を柔らかくする強い特殊手技をまず先に行います。どれほど遠位部が浮腫んでいても、まず、近位部を柔らかくし、近位部が流れるようになるまで、遠位部にはMLDを行わないこともあります。

    ボッダー式の場合、MLD単独でも、一定のリンパ浮腫の改善はみられますが、最もリンパ浮腫が改善するのはMLDと多層包帯法を併用した時です。また、多層包帯法のみよりも、MLDを併用するほうが改善は早くなります。

    複合的療法(CDT)の 研修施設

    2018年現在、CDTの理論研修部分については、厚労省が認定するライフプランニングセンターの「新リンパ浮腫研修」全4日間を履修した者が、実技研修については各地のCDT研修施設に通って研修コースを受講することで、CDT療法士として医療機関に勤務することが可能になります。しかし、国家資格のような厳格な資格ではないため、それ以外の施設で理論や実技研修を受けた医療従事者がCDT療法士としてリンパ浮腫治療に従事している例も少なくありません。

    厚労省が定めている実技研修履修時間を満たすだけでは、実践力の習得が難しいと判断する研修施設ではそれを越える研修時間を設定しています。なぜなら、セラピストのMLDや多層包帯法の技術力、治療計画の構築の的確さの違いにより治療結果にばらつきが出てしまうためです。ボッダーアカデミーインターナショナル認定CDTコースは数十年のCDT療法士育成の研修実績があり、治療経験豊富な認定講師が指導に当たり、CDT技術の実技試験、理論試験ともに、世界共通の厳格な評価法で採点されるため、修了者のレベルが一定しています。

    日本では、現在、関西のMLDトレーニングセンターと関東の癌研有明病院がそれぞれのCDT療法士認定コースの研修にボッダーアカデミーの講師による実技研修を採用しています。

    ボッダーアカデミーインターナショナルの認定コースでは、MLD技術、包帯法、治療計画の習得に全研修課程160時間の約8割を費やし、治療計画の演習を繰り返し行うことで、患者に最も適切なCDT治療計画、MLD、多層包帯法を提供できるセラピストを育成しています。

大阪にあるアロマスクールJEAでは、日本のアロマ資格AEAJ、メディカルアロマの国際資格IFPA、メディカルハーブ資格JAMHA、リンパドレナージの国際資格MLDが取得できます。アロマのほかにボディケアや解剖生理学、セラピストとしてのマナーも学べて、転職・就職・開業に強みを発揮。自宅サロンや医療・介護ボランティアなど活躍の道は多彩に!

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